2011年12月31日土曜日

きちくまの2011年ベスト・アルバム30選 その4 #3-1



3.White Shoes & The Couples Company / Album Vakansi

一応先に註釈しておくと、本国インドネシアでは昨年発表されていた作品だが、日本とアメリカでは今年リリースされたので、遠慮なく今回の30選にも加えさせていただく。
本作の解説の依頼をいただいてからというもの、今日まで思い出しては取り出して聴き入ってしまう愛聴盤になってしまった。英米のロックにはない、エキゾチックで素朴な陽気さと渋谷系も真っ青の都会的洗練が絶妙なバランスで融合しているのがすばらしい。本人たちの佇まいにも惚れ込んでしまったし、曲のクオリティーも高く、夏に聴きたいパワフルなソフトロック。これは5年ぶりとなる2作目のアルバムでいい意味での脱インディー色を果たし、楽曲のアレンジも華やかに。こういう爽やかな音楽こそラジオで流れてほしい!




ローリング・ストーンズ紙(米のほう)が選んだインドネシア・ソングのオールタイム・ベストにも前作(こちらもぜひ聴いてね)収録の名曲「Senandung Maaf」が129位にランクインしているところからも国民的なインディー・バンドであることがうかがえるが、同じく121位にランクインしている伝説的歌手Fariz RMの「Selangkah Keseberang」を本作中で本人を招いてカヴァーしていたり、150位のMocca(こちらもかの地で名を馳せる素敵なギターポップ・バンド)の2011年7月のラスト・ショウで共演を果たしていたりと、調べれば調べるほど現地シーンの相関関係が見えてくるのも新鮮でおもしろかった。
このアルバムは文句なしの傑作だし詳しい話はぜひ日本盤を手にとって解説を読んでもらえると幸いなんですが(宣伝)、とにかくこの超かっこいいバンドを日本でも観たいです。生で拝みたくなること請け合いのライブ動画その① その②。あと、ヴォーカルのAprilla Apsari嬢はバイク好きであると同時にイラストのセンスがとんでもなく抜群というのも萌え情報として付け加えておこう。








2.Ventla

かつてプラモミリオンセラーズ名義で2枚のアルバムを残している鈴木周二氏によるブログ「買ったCD」(まんまですな)を一時期愛読していて、ここからメンヘラ歌手Polly Scattergoodやウルグアイの天才SSWのMartín Buscagliaだったりを知ることができて大変ありがたがったのだが、今年に入ってパタっと更新が止まってしまった。あららと心配していたら、更新に飽きたので変わりに音楽を作ると表明。そうして突如始まったプロジェクトが"宇宙船"を意味するというVentlaである。
tumblrにあるように100枚のフリー・ダウンロードできるアルバムを作ることを宣言し、実際に7月に最初の3枚が発表されてから大みそかまでに10枚のアルバムが発表、掲載されている。とんでもない制作スピードだ。
キャッチーながら毒とひねりをもつメロディーとヘタウマな歌い回し、一曲の短さと情報量の密度の濃さ…などの特徴的な作風はそのままに、エコーの効きまくったメランコリックなシンセ・ポップへと接近。露骨にチルウェイヴを意識した音世界を展開している。90年代アイドルポップやハロプロの熱心なファンでもある(こんなブログもされているし、プラモ~時代にはMy Little Lover「Hello Again」の秀逸すぎるカヴァーを残している)氏の手による哀愁メロディと多種多様の機材(右下に記載)を駆使したドリーミーな音響(かつてのトイポップ的な妙味も随所で顔を出す)のコンビネーションが心地よすぎて、どこか昔のSFにも通じる懐かしさを訴えかけてくるよう。
今年はネットレーベルやらbandcampやらの盛り上がりが見逃そうにも見逃せず、海外ブログも巡回しつつフリー・ダウンロードできるアルバムやミックステープを漁りまくってみたが、Ventlaはアートワークもハイセンスだし(※追記→メロディや歌詞より先にアートワークありきとインタヴューで答えてる!!)、企画も内容も世界中のどれよりも正直一番おもしろかったし感情移入できた。90年代渋谷系の時代にデビューし、最新の音楽も聴きまくり流行を押さえている方だからこその懐の深さ。実際、ネット上でも当然のように話題になり、第三者によるVentla音源オンリーのmixもつくられている。
とりあえず現時点で4時間近い音源が発表されているわけだが、楽曲でいえば「匍匐前進」(『paralyzed』)「twilight boombox」(『paracusia』)「trig」(『ten』)あたりが特によい…っていうか個人的に好き。氏のlast.fmによるとBuono!をめちゃくちゃ聴いているみたいだし、マックス・ツンドラともこんなやりとりをしているし、好きになる要素しかないです。






1.Architecture In Helsinki / Moment Bends

長々とここまで書き連ねてきたが、今年一番嬉しかったのは昔から大好きだったこのバンドが復活して文句なしの最高傑作を届けてくれたことだ。先行発表されたシングル「Contact High」はそれから一週間で50回くらいリピートしたし、アルバムもお腹いっぱいになるまで聴いてるつもりで未だにぜんぜん飽きない。これが万人にとって今年を象徴するアルバムになりっこないのは俺だってわかってるが、一番楽しくてポップなアルバムということならこれを推すしかない。マジでカムバックしてくれてありがとう。

03年に最初のアルバム『Fingers Crossed』をリリースしたとき、オーストラリア・メルボルン出身のこのバンドには8人もメンバーがいた。リコーダーや木琴にフルートなどを持ち替えながら、和気あいあいとアンサンブルを奏でる典型的なトゥイーポップ・バンドだった。次の『In Case We Die』は賑やかさを維持しつつもダンサブルな色合いも強くなったコンセプト作で、対となるリミックス・アルバム(ホット・チップやDAT Politicsも参加)も充実した内容となり、kitsuneのコンピに曲が収録されたりもした。三作目となる『Places Like This』はPolyvinylから。野性味あふれるエレクトロ・ファンク路線へと変貌し、トロピカル風味は2011年の空気を先どっていたと言えなくもないが、実際このころには初期の可愛らしさが抜けて別のバンドみたいになってしまい、作品のクオリティーは依然として高いもののメンバーも2人減ってしまう。
来たるべき4作目は『Vision Revision』になるというアナウンスが流れてからしばらくして、公式ページの更新のほとんどが止まってしまう。煮詰まった予兆は三作目からのEP『Like It Or Not』に収録された「Beef In A Box」あたりで当時から感じられたが(プログレばりに凝っているファンク・ナンバー。俺は好きだけど…)そこからなんとか持ち直し、2年の年月と辛苦をかけて本作はつくられた。気がつけばバンドは地元の優良レーベルModularに移籍をはたし、メンバーはさらにもう一人減っていた。




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写真で見比べても結構な変化だ。老けたなって正直最初は思った。ピッチフォークは本作『Moment Bends』のレヴュー冒頭で読者にこんな疑問を投げかけている。
早熟でおませなトゥイー・バンドがいつか直面する問題がある。"どのように成長して、おなじみの鉄琴とお別れするか?"
たしかにこれまでAIHの売りといえばチルディッシュな無邪気さだ。過去のPVを観ればそれがよくわかる。メンバーたちがカメラの周りを笑顔でぐるぐる回る「It' 5」。トランポリンで跳ねまわる「Hold Music」。これらに比べれば、本作からの「Contact High」で観られる80年代チックなファッションの紳士による寸劇は若干元気がないかもしれない(楽曲は最高だけどな!)。ジャケットのデザインもこれまでのカラフルなものに比べるとやや精彩を欠いていると思う。
だが、紆余曲折を経ての精力を注いだリリースだけあってとにかく曲の粒が揃っている。80年代風シンセのきらめく虹のようなサウンドも気持ちいいが、本作の(そしてこのバンドの)キモは息の合ったコーラスワーク。男女混声でシンセのフレーズとうまく重なりあい、極上の快楽性を生みだしている(「YR Go To」「Sleep Talkin'」あたりの楽曲に顕著)。本作からは唯一、08年時点で発表されていたシングル曲「That Beep」は当時ピンとこなかったが現在のシンセ・ポップ再興を予期していたかのような節もあるナンバーで、気がつけば紅一点になってしまったKellie Sutherlandの歌声はほぼ全編で大活躍だ。
結果的に隅々まで手が込んで均整のとれたちょっぴり作品となっていて、無邪気だったころが恋しくなくもない。でも、いい歳を迎えてしまった大のオトナが「僕は脱獄者/君も脱獄者」と歌う、とびきりハッピーでバウンシーな「Escapee」を聴いているとそれだけで幸せな気持ちになれる。ちなみにその曲のビデオは親と子の葛藤や巣立ちを題材に扱っている。新進気鋭のニコラス・ジャーやサリー・セルトマンによるリミックスも話題になった「W.O.W.」歌詞もステキだ(たぶん妊娠というか、子を設けることの感動についての曲だよね)。立派に老けて大人になったけど、相変わらず夢見がちで、ロマンチックでヘンテコなことも考えてる。たまに真剣なこともマジメに考える。そういうのに弱いもんで。

きちくまの2011年ベスト・アルバム30選 その3 #10-4

俺だけが感動の年間ベストもそろそろ大詰め。めんどくさくなってきて11位の作品を1位にして残りもぜんぶ繰り上げようか一瞬悩んだが、そんなことしてもしなくてもいつか人は死ぬし、大晦日の夜はぼっちで指咥えて紅白でも観てるんだろうな。あゆ頑張れー。

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10.TV-Resistori / TV-Resistori

IslajaやLau Nauなど日本でも人気のミュージシャンを擁し、ポスト・ロック/アヴァンギャルド寄りなレーベル・カラーで知られるフィンランドのFonal Recordsにおいて特異な地位を築いているバンドの三作目。"テレビの抵抗器"というバンド名のとおり、元々はキーボード主体の緩いローファイ・モンド・ポップを奏でていた彼らだが、機材類のトラブルやメンバーの変遷、そして前作から本作までの5年に及ぶインターバルなどの事情からスタイルを変化。アメリカン・ルーツ音楽や、ベルセバなどのインディー・ギターポップからの影響を反映させたという本作では生楽器主体の素朴なアンサンブルを展開。
まあ、どこをどう聴いてもベルセバよりはThai Pop Spectacular(古いタイ・ポップのコンピ盤)の世界観のほうがまだ近いというか、スタックリッジが田舎のビートルズならこちらは辺境のトゥイー・ポップ奇形児。フィンランド語の響きと屈折した曲調、ミドルテンポ主体の絶妙に微妙な構成、どこか牧歌的な男女混声コーラス…などがビザールな化学反応を起こし、特筆すべき曲もないのにリピートせずにはいられない中毒性を秘めている。誠実な作品だと思うが珍味として味わうのが吉。流行りの青春ギタポに食傷ぎみな人へ強くおすすめ。
◆Tv-resistori: Funtsi
◆Tv-resistori: Voi ei, ei voi olla totta


9.Summer Twins / Summer Twins

仕事もロクにせずに遊んでばかりいた猛省すべき一年だけど、今年に関してはマックス・ツンドラ関連の諸々とこのバンドのリリースに携われただけでも光栄だし誇りに思っている。一年ちょっと前に彼女たちの存在を知り、フリー・ダウンロードできるEP(本作の日本盤ボーナストラックにも一部収録)を耳にして、これが日本に紹介されなきゃウソだとレーベルに進言。本当に店頭に並んでしまい、おかげさまで好評です。ありがたや。
愛くるしいルックスと世界観、女子力抜群のファッションセンスにノスタルジックで甘酸っぱい音楽性の豊かさ…などブラウン姉妹のスター性は群を抜いているだけに、最初に本作のサンプル音源を聴いて全曲モノラル録音だと知ったときはブったまげたものですが、かわいい顔して甘ったるさ一辺倒に媚びず、ハードコアな一面をときおり覗かせるのも惚れどころ。本国アメリカでの所属先であるBurger Recordsはマイナーながら良質なバンドの宝庫で、カセットでのリリースにも熱を入れ、しかもパワーポップを中心に眠れる名盤の再発も活発(モンチコンのこの記事に詳しい。Milk 'N' Cookies最高!)。その流れか、本作のプロデューサーは誰もが知る伝説のハードコア・パンク・オリジネイターである、あのジャームスのドラマーDon Bolles! リリースが遅れるほどの難産レコーディングだったそうで、その甲斐あって出だし好調の一作。もう一皮むけてほしいけど、今だってもっと話題になっていいと思う。ビデオもとーっても秀逸。
◆I Don't Care(FREE DL)
◆Summer Twins - Crying in My Sleep
◆The Good Things
◆一部試聴(レーベルのページ)
◆日本語インタヴュー THE RAY Vol.013 014~015P(from here



8.Starfucker / Reptilians

元々はポートランド出身Josh Hodgesのソロ・プロジェクトとしてスタートしたこのバンドは、00年代の前半に腐るほどあった"良心的な(≒退屈な)"インディー・ソフト・ロック作、そこから一転エレクトロ・サウンドを導入した野心的なEP『Jupiter』を経て名門Polyvynalに移籍。ワイバーン飛び交うファミコンRPG調なジャケットも狙いまくりな自身2作目となるフルアルバムでは、ダンス・ポップからエレクトロ・シューゲイザー~チルウェイヴっぽい音楽性にまで発展していく…って、節操なさすぎる! 中学生レベルのバンド名(ストーンズのボツになった楽曲名が由来。自分の世代的には、先にNINの大名曲を思い出してしまう)と同様に、拘りより先に流行と評価に飛びつく(言いすぎ?)軽くてスノッビーな執念は見事だが、それ以上に見事なのは曲作りの才能で、最初にアルバム序盤の「Julius」「Bury Us Alive」におけるきらめく電子音の渦を浴びたとき気持ちよすぎてどうにかなってしまうと思った。MGMTあたりにも通じるヒッピーライクなファッション、作中に思想家/研究家のアラン・ワッツのダイアローグを挿入するセンスなど鼻につくところ盛りだくさんで、どうしてこんなに好きになったのか自分でも謎だが、どこか安くて俗っぽいセンチメンタリズムに涙してしまう。この写真とかもチャラくて泣けるもの。にしても、今年のPolyvinylはディアフーフ、カシオキッズ、Loney Dearと良作ぞろいだった。
あと今さらの話をすれば、先述したEP(09年作)に収録のシンディ・ローパーのカヴァーは今もいろんなところで耳にする定番で、あらゆる女子がキャッキャと跳ねる鉄板トラック。スピンすればモテること請け合い。俺にもファックさせてよ。



7.Sondre Lerche / Sondre Lerche

10代でデビューを果たしたこのノルウェー・ベルゲン出身のSSWは早熟なだけでなく移り気なアーティストで、00年代を通して流麗なポップスからチェット・ベイカー風の歌ものジャズにダンサブルなギター・ロックまで、本人のルーツやそのときの気分をダイレクトに作品に反映させつづけてきた。
原点に立ち返って華々しいオーケストラル・ポップを魅せた09年の大傑作『Heartbeat Radio』につづく本作は、彼が近年活動の中心地としているブルックリンで隆盛を誇るインディー・ロックからの影響がモロに露見される野心作となっている。アニマル・コレクティヴオーウェン・パレットの楽曲のカヴァーを発表し、本人も羨望交じりにその魅力を公言してきたが、本作ではプロデュースに盟友Kato Ådland(ベルゲン・シーンを支える才人で、Major Seven & The Minorsとしての活動も)のほかにアニマル・コレクティヴやディアハンターetc...との仕事で知られる売れっ子Nicolas Vernhesを起用。洒脱なコード進行や達者なメロディ・メイクといった持ち味が生々しくてときに暴力的なアレンジによって強化されており、バカラック調の冒頭「Ricochet」で鳴るドラムの響きや、「Go Right Ahead」での耳つんざくようなギターなど、驚異的に鳴りのよい録音にも唸らされる。従来よりもハードボイルドでヒリヒリした仕上がりとなって、みずからの名をアルバム・タイトルに冠したのも必然といえる(本作が嫁さんの名前に由来する自身のレーベルMona Recordsからの初リリース作というのも関係あるだろう。ちなみに嫁さんは女優で、ソンドレ作品のPV監督も務めている)。
弾き語りメインの「Domino」を聴いてもわかるように、技巧派SSWとしては特筆すべきグルーヴィーなセンスもこの人の長所で、そのあたりはライブでもスクリッティ・ポリッティをカヴァーしていたりするし本人も自覚的なのだろう。ピッチフォークの「The Worst Album Covers of 2011」にも見事選ばれてしまったが、個人的には色合いよりも生え際が気になってならない。


6.Thomas Dolby / A Map of the Floating City

先行リリースされたEPを聴いたときはここまでの内容になるとは予想だにしなかったが、80年代を代表するテクノ・ポップ「彼女はサイエンス」から29年、フルアルバムとしては92年の『Astronauts & Heretics』以来となるカムバック作は楽曲の充実ぶり以外にも画期的なトピックが多く、最高傑作と呼んで差し支えなさそうなほどの充実ぶりを誇っている。
かつてマッド・サイエンティストと呼ばれた鬼才は、ここではアダルト・オリエンテッド・シンセ・ポップとでも称したい、年齢を重ねたからこその落ち着いて味のある楽曲を披露。ビートルズ好きの男とティアーズ・フォー・フィアーズのファンである女のふたりが恋に落ち、だだっ広い地平を旅していく…ブルーグラス・ナンバー「Road To Reno」の曲調や歌詞に顕著なとおり、かつてのファンキーさも維持しつつどこか懐古的なフィーリングが心地よい。“Urbanoia”“Amerikana”“Oceanea”の三章仕立てとなっている本作はアレンジも実に巧妙で、レジーナ・スペクターをフィーチャーした攻撃的な「Evil Twin Brother」、蛙の鳴き声を口琴で表現した(演奏しているのはイモージェン・ヒープ)「The Toad Lickers」、オートチューンを用いた穏やかな「Oceanea」(元フェアグランド・アトラクションのエディ・リーダーとのデュエット)と、曲ごとに豊かな表情を見せる。
また、ファンタジーとしてのアメリカーナ追求という“Amerikana”のテーマやアルバム全体のムードや節回しが、かつて彼がプロデュースを務めたプリファブ・スプラウトの作品を少なからず想起させるところもあって涙せずにいられない(不器用なデモ音源がそのまま発表されてしまったような09年の『Let's Change The World With Music』も、今のトーマスが携わっていればまったく違う作品になったんだろうな…)。一時期は音楽活動を引退し、IT会社を立ち上げ音声ファイルや携帯電話の着信音などを手掛けていた彼だが、そんなキャリアを活かして本作をサントラとしたゲーム・サイトiPhoneアプリをプロモーションに活用したり、ファン・フォーラムで音源を先行リリースしたりと音楽業界のあり方に一石を投じている。ってことでアプリは俺も前にやってみたけど、蛙がどうも気持ち悪くてなぁ…。洋ゲーってむずかしいよね。


5.The Elected / Bury Me In My Rings

2011年に入ってライロ・カイリーが事実上の解散状態にあることがアナウンスされたが、彼氏とよろしくやってるジェニー・ルイスに隠れて、バンドのもう一方の頭脳だったブレイク・セネットは(少なくともネット上では)ここ数年は消息不明状態だった。本来は彼のサイド・プロジェクト的な位置付けだったThe Electedとして三作目となるこのアルバムのテーマは"死"。アルバム・タイトルも"輪のなかに僕を葬り去って"とでも訳せばいいだろうか。06年の前作が西海岸の陽気が全開な『Sun, Sun, Sun』だっただけにそのギャップにも面喰ってしまうが、アルバムを再生してのっけから聴こえてくるのが"君を愛するために生まれてきたんだ/これからもそうするつもりだよ/たとえ別のいい人が君にいるんだとしても"(「Born To Love You」)というほろ苦いフレーズなのだからたまらない。
多くエリオット・スミスに喩えられ続けてきた儚い歌声と遁世的な浮遊感はライロ・カイリー作品においてもささやかに輝いていたが、ここでは一層の諦観に満ちている。かといって息苦しい作品かといえばそうでもなく、彼一流のソングライティングの才が冴えわたって暗いムードも重くならず、気楽に聴きたくなる軽やかな旨みに溢れている。今回とりあげる30枚のなかでも本作はぶっちぎりで地味だが、ほとんどの曲でサビ後に粋な転調が用意されているのが嬉しいし(「Look At Me Now」がわかりやすい例)、繰り返し聴くことでじんわり沁みてくる。少なくともレコーディング作に限っていえば、ラフな路線に一辺倒なジェニーに比べて、彼の丁寧で実直なスタンスはあまりに過小評価されすぎだろう。


4.ツチヤニボンド / 2

自身のブラジル音楽趣味を追求することで日本のシティ・ポップスにも通じる洗練ぐあいと妙な違和感を醸し出していた前作に比べ、て、4年ぶりとなる本作のもつ疾走感は一見わかりやすくカッコいいがやはりどこかおかしい。テレヴィジョンやラモーンズあたりのパンクに割と最近になって感化されることで生まれたサウンドとのことだが、中心人物である土屋貴雅氏はパンクのどこをどう聴いてこんな音を作り上げたのだろう。そもそも本気でCDを売るとするなら畦地梅太郎の版画をジャケに用いるセンスは渋すぎるし、AIR JAM帰りの客にこれを聴かせてもパンクだとあんまり認めてもらえないだろう。
12月に催されたディスクユニオン吉祥寺店でのインストア・ライブでレコード店に通いつめてきた思い出を土屋氏は語っていたが、たとえばロッキング・オンやガイド本みたいな教科書よりも自分の嗅覚を頼りに、限られた手持ちで少しでもいい音源を入手することの執念、試聴機への愛情がそこからは感じられた。
昨今の若いミュージシャンがインターネット・ネイティヴならではの感性や手法で情報や教養の取捨選択をスマートに行っているとすれば、土屋氏や他のメンバーたちのアナログで前時代的な音楽への執念と膨大でリスニング量(あるいはイレギュラーなリスニング遍歴)を血肉化して基礎体力とし、常人の発想では本来繋がらないものを強引にくっつけて噛み砕く腕力と咀嚼力でもって、猛烈なテンションや跳躍力に繊細なリリシズムまでを生みだす気ままな武骨さがこのアルバムにはある。「○○系」と手ごろなジャンルに安易に収まらず、オンリーワンな「ぼくのかんがえたパンク」を徹頭徹尾に貫いているのが本作の魅力。単なるトレースや二次創作とは異なる、流行に乗れない不器用な自分史でありながら勘違いを恐れぬダイナミックなセンスが頼もしく、聴いたことのない音楽を鳴らそうとする姿勢はいまどき(アティチュードとしての)結構なポストパンクっぷりでもある。
柔軟で緩急自在の演奏も聴きどころで、クラウトロック的なリズムと南米音楽の享楽感がブレンドされたインストの「クロフネ」にはじまり、乾いたスネアの音を軸にミニマルな演奏と一転しての急転調が刺激的な「花子はパンク」、間奏のつんざくギターソロも強烈な"まともな"パンク・ナンバー「ふわふわ」、トライバルなリズムが妖しくファンキーな密室R&B「メタルポジション」と、前半だけでも印象的なナンバーが揃っている。パンクパンクと書いてきたがアルバム後半には前作譲りの静謐でメロディアスな曲も収録されており、そのなかでも珠玉のハイライトはやはり、アーサー・ラッセルとミルトン・ナシメントが舵をとる幽霊船でひとりギター片手にくだを巻いているような「夜になるまで待って」の零れ落ちんばかりにおセンチな響きだろう。一度食事の席をともにしたとき土屋氏は(意外ながら)ブルーノ・マーズの歌唱力を賞賛していたが、いやいや氏のファルセットもしんみりくるのだ。あとはもう少しライブをやってくれれば…。

2011年12月23日金曜日

きちくまの2011年ベスト・アルバム30選  その2 #20-11

20. Russian Red / Fuerteventura
現地でリリースされて全曲試聴を聴いたとき、スペインのミュージシャンってだけで日本盤を出さなきゃアホだろって内心思ってたんですが、ここにきてラジオではフエルテベントゥーラより愛をこめたパワープッシュ状態で、逆に来日公演を見逃してしまった俺が一番アホだったという結末に。ファイストもそうだけど、女性SSWの日本盤後だしリリースがこれからのトレンドなんだろうか。オトナの事情はわからないが、これはベルセバ人脈を従え一気に世界制覇をもくろんだ無敵艦隊のようなポップ・アルバム。でも名曲「Cigarettes」は録り直したのより元のシンプルなアレンジが好き。

19. YACHT / Shangri-La
ユートピア/ディストピア思想を題材につくられたコンセプト作。DFA移籍&女性ヴォーカルのクレアさん加入後のYACHTは、アホでキュートな作風と作品のクオリティーが理想的なバランスでたまらん。あの伝説のBlack Devil Disco Clubとの交流なども経てバンド・スタイルでつくられた本作は、冒頭二曲こそ威勢がいいものの神懸かり的な前作と比較するとややスケールダウンした印象。しかし、ラストのタイトル・トラックボンクラな歌詞("もしユートピアを建てたら、君も遊びにきてくれる?")も併せて泣けるし、なんだかんだ必聴。限定版のユルい宣伝ビデオも最高! チャットモンチー以来の傑作シャングリラだ。ラーラーラーラーラー♪

18. Noah and the Whale / Last Night on Earth

上半期に聴きまくったアルバムその1&青臭さオブ・ザ・イヤー。こちらもフジロックで観ることが叶わず残念だった。UKアンタイ・フォーク時代より、ダイナミックに飛躍したこちらが断然好き。ブルース・スプリングスティーンやビートルズの「Don't Let Me Down」を取り上げながら" And we'd sing and play / Simple three chord rock and roll "と歌う本作の象徴のような「Give it All Back」、薄暗い夜に少年は故郷を飛び出して、もう二度と帰らない「Tonight's The Kind Of Night」そして、まんまキンクス「Lola」すぎる「L.I.F.E.G.O.E.S.O.N.」! ちなみに、NYの暗黒裏番長ことElysian Fieldsも今年に入ってまったく同じタイトルでまるで作風の違うアルバムをリリースしていて、そちらも結構よかった。


17. Peaking Lights / 936

アルバム冒頭All The Sun That Shinesのベース・ラインが流れだした時点で傑作と確信したが、聴けば聴くほどずぶずぶハマってしまう底なし沼のようなミニマル・サイケデリック・ダブ。気だるくて、退廃的で、部屋のすみっこで腐ったバナナのような甘みもあるが、ちゃかぽこ鳴るチープ極まりないドラム・マシーンの音には覚醒作用も。あと、広がる景色が溶けるように反復していくノンビートのKey Sparrowが本当いい曲で…。Not Not Fun周辺はおもしろい。



16. Everybody Else / Wanderlust

元プッシュ・キングス! とかそういう事情は何も知らず耳にしたんですが(すいません)、強烈フック連発で今年耳にしたなかでもぶっちぎりに完成度の高いパワーポップ作。キラキラしたキーボードと曲進行が「ラジオスターの悲劇」を彷彿させる「Photograph」、鉄板パーティーチューンDifferentをはじめ泣ける曲ばかり。これとチープ・トリック『at武道館』と(来日公演もよかった)ウェリントンズの新譜が一時期のヘビーローテだった。今年はマフスも生で拝むことができたし幸せだったなー。


15. Veronica Maggio / Satan I Gatan
スウェーデンの今年5月13日付シングルチャートにアルバムの全曲がランクインし、12月現在もアデルなどと居座りつづける怪物ポップ作。元々は品のよく色っぽいソウルを得意とした彼女は、この作品でエレクトロもロックも呑みこんで大化け。どの曲も超キャッチーで、ロビン(このビデオよかった!)は評価するのにこちらは世界的にスルーなのが謎すぎる。最初のシングル「Jag kommer」は英語で"I'm coming"の意で、するどいギターリフとシンプルなトラックの産みだすグルーヴも強烈だが、指マンからピンセット、行ったりきたりを暗喩的に繰り返す卑猥なPVがすばらしく、ケイティ・ペリーの「Teenage Dream」などと並ぶ現代おセックルポップの金字塔だ(曲終盤の怒涛の盛り上がりもそういうことでしょ)。ちなみに彼女は今年で三十路。

14. Metronomy / The English Riviera

上半期によく聴いたその2。聴きすぎて今さら書くこともないが、スタイルを崩しすぎずにエレクトロの狂騒とおさらばして、ダンサブルだけどどこか黄昏た摩訶不思議な音世界を築き上げたバンド、中心人物のジョセフ・マウントという人はとても賢いんだなー、と(逆に頭でっかちの袋小路へハマってしまったように映ったのがジャスティス)。サマソニは見逃してしてしまったので、来年頭の来日公演は本当に楽しみ。

13. Twin Sister / In Heaven

前作の強みのひとつであったローファイ味を排除し、モンド/ラウンジ~ステレオラブ的な反復とディスコチックで緩い浮遊感に甘い歌心をより強調した意欲作。出だしの3曲で即死。ほんのり香るアジアン・テイストだったり、どこかいいとこ取りな小賢しさもチラつかせつつ、ずばぬけたアート・センス(このジャケもいいよなー、アナログ盤の購入を推奨)とAndrea Estellaの浮世離れした声およびルックスが反則的レベルなので文句のつけようもなく。あと彼女のtumblrも趣味よすぎ。ミンキーモモやセーラームーンが好きなのね。

12. 住所不定無職 トーキョー・ポップンポール・スタンダードNo.1 フロム・トーキョー!!! 
アイディアと引用とロマンスの宝庫だった「ベイビー!キミのビートルズはボク!!!」で虜になった身としては、輝く卑しさがスポイルされ、割と普通にロックしている『JAKAJAAAAAN!!!!!!』に(´・ω・`)ショボーンとなったが、つづく今年2枚目の"フルボリュームシングル"となる本作で王道をいく姿勢に感動してギンギンに再熱! 冒頭Magic In A Pop!!!に施されたストリングス・アレンジで明らかなとおり、もはや無職でも低収入でもないが、歌詞どおり踊りだしたくなる最強っぷり。カジヒデキやヒダカトオルもプロデュースに迎え、ひたすらイイ曲を演奏しまくるバンドは中央線界隈から東京の最前線へ殴り込み。「キスキス」はぜひBuono!にカヴァーしてほしい!

11. Eleanor Friedberger / Last Summer
過去にフランツ・フェルディナンドのアレックスと付き合ってたことでも有名なFiery Furnacesのお姉ちゃんのソロ作。アヴァンギャルド精神が逞しすぎるバンドの音の延長線上にありながら、色褪せた写真のような郷愁やSSW的な内省もチラつかせ、ようやく常人にとっての"ひねくれポップ"のラインに到達(本作がバンドの所属先であるThrill Jockeyではなく、Mergeからのリリースというのもミソ)。彼らの作品では、比較的メロディアスでとっつきやすい『EP』が一番好きだったのでこの路線は大歓迎。ややアイディア先行型の曲もあるが、それも含めて甘酸っぱくキュートにねじくれている。「Roosevelt Island」のベース・ラインとかすんばらしいよ。

2011年12月14日水曜日

きちくまの2011年ベスト・アルバム30選  その1 #30-21

気がつけば2011年も終わろうとしていますが、12月に入って貯金残高がとんでもないことになりCDとかレコードとか買ってる場合じゃなくなってしまいました。これから新しい音源と出会うまえに来年を五体満足で迎えられるかも怪しくなってきており、さっさと年間ベストも片づけて、思い残すことのないよう腹いっぱい風俗に通ってから死にます。俺達いつまでも悲しみ集めるルンペン(中野サンプラザのライブもスカンピンで行けなかったですけど、お疲れ様でした)。

先に書いとくと、(自分は例年そうなんですが)ポップでわかりやすいものと、わかりやすく変なものを中心に聴いてました。話題のあの本の影響もあってヒップホップも自分なりに楽しんだ一年でしたが、リリック聞き取れないし門外漢だしタイラーザ以下略の顔が怖いので外しました。ひとりで30枚も選ぶのは自意識過剰ですよね。わかってるんです。定額料金の底なし娯楽がインターネット。どうか見逃してやってください! 殴らないでください! うー、こうなったら不労所得ライフで三億円GETや!

※[アーティスト名] / [アルバム名]
※実際の曲をチェックできるよう文章の最後にリンクを貼りつけましたが、文中で貼っている場合は省略している場合もあります。また、ここで表記を統一すると面倒なので元々の動画のタイトルをそのまま掲載しています。悪しからず。

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30.V.A. / Red Hot + Rio 2
定番となったエイズ撲滅のためのチャリティー・コンピ・シリーズの最新作は、収録曲のオリジナルと特設ページ(の下のほう)に目を通せば60年代ブラジルのトロピカリア・ムーブメントについてあるていど知ったかぶりできてしまうほどの充実盤。ベイルートやオブモンなどインディーキッズ御用達のビッグネームも名を連ね、当時の生き証人たちとコラボを楽しむさまもユニークだが、その背後にはデヴィッド・バーン(Luaka Bop)やベックが歩んできた道があることも昔の曲を収録することできちんと示しており、トロピカルな音がクローズアップされがちな昨今の潮流を考えても自覚的で意義のある編纂。そういえばトン・ゼーの1stも今年再発されましたね。あと個人的にはヒタ・リーのこのアルバムも大好き。
◆03 Um Girassol da Cor do Seu Cabelo Mia Doi Todd & José González

29.The Sandwitches / Mrs. Jones' Cookies

ジャケ左の女性の髪形がイデオンの主人公みたいになってて発動編って感じがしますが(実物は全く違うし、案外歳食ってるけど)、これは元フレッシュ&オンリーズの人とかによるサンフランシスコの女性三人組による二作目のフルアルバム。おどろおどろしく奇怪なムードを演出するエコーに、神秘と素っ頓狂のあいだをゆく歌声やコーラス、USローファイ勢のなかでも群を抜いてヨレヨレの不思議アシッド・フォーク。マジカルだったりオカルトチックだったりするところはプログレ好きにまでアピールしそう。最近もこういう格好してるんでしょうか。本作もこれまでもジャケデザインがエクセレント
◆The Sandwitches- Lightfoot


28. The One AM Radio / Heaven Is Attached By A Slender Thread

かつて暗く厳かなラップトップ・フォークを得意としたインド系アメリカ人のリシケシュ・ヒアウェイは、本作でバンド・スタイルに転じ、奔放なビート・メイキングと持ち味のメロディセンスで、これまでとひとあじ違う"夜の風景"の描写に成功。前作とジャケットを見比べればその違いは一目瞭然で、先日の来日公演も(モミアゲ込みで)すばらしかったBathsや、anticonのエイリアスも参加の清々しい良作。価値観が転覆したことで生じたであろう開き直りのよさが痛快だ。詳しくはクッキーシーンに掲載された拙レヴューをご参照ください。


27.Trampauline / This Is Why We Are Falling For Each Other
お世話になってる某レーベルの方に教えていただき、すっかり惚れ込んでしまった韓国の女性シンセ・ポップ・ユニット。フジテレビ叩きみたいな(双方が)虚しい出来事もあったが、いわゆるK-POPとは別の、かの国の魅力的なインディー・ポップの土壌が自分にもようやくうっすらと見えてきて(たとえばマックス・ツンドラや新年早々に来日予定のダン・ディーコンも招聘しているSUPER COLOR SUPER、プロダクション・デシネからもリリースされた秋休みや、ele-kingにレヴューの掲載されたVidulgi OoyoOだったり)、一度きちんと調査してみたい。彼女(たち?)に話を戻すと、この動画で一発ノックアウト。ゆるくやわらかい電子音と飾らない佇まい。白いスニーカーが眩しいよ。

26.LOVE ME TENDER / Twilight

最初に聴いたとき「七色の鍵盤を軸とした夢世界フュージョン。ロリな歌声まで入ってノスタルジーときどきサイケ」とツイートしたが、10月のおわりに下北沢で観たこのミニアルバムのレコ発ライブで驚いたのは、曲のバリエーションと展開の豊かさ(音楽同様にフリーダムな観客の内輪っぷりにもビビったが)。ポップスがもつべき捻りと威厳と茶目っ気への強いこだわりに感服。あと、特に3.11直後のしんどいTL上で高木壮太氏のツイートにだいぶ励まされたし、あれがなかったら正直聴いてなかったと思う。日本でもこの手の企画をやってほしい。やろうよ。 

25.Dreams / Feelings 4 U

LAを拠点に活動するビートメイカーJesse PimentaによるEP。bandcampのページでは"dopewave"や"sample-wave"なんてタグがついているが、音の雰囲気でいえば(いまやすっかり売れっ子リミキサーになった)Star Slingerの流れも汲んでいる。所属先のネット・レーベルAbsent Feverについては今年いちばん更新を楽しみにしていたこのブログの記事で知ったが、未来を期待したくなる秀作ぞろいで、全音源がフリー・ダウンロード可能($1払って購入することもできる)。ちなみに、ポルトガルにもDreamsというまんま同名のバンドがいて、こちらもチルウェイヴ以降なサウンドでよい! FreindsWeekendばりにややこしいぞ!
24.Oh Mercy / Great Barrier Grief

渋さや苦さも見せつつ、軽快なオールドタイミー・アコースティック・ポップを鳴らす豪メルボルンの4人組。バンド名からもどことなく香るディランチックというか生真面目なムードもよい(ダニエル・ラノワprod.のあのアルバム結構好き)。もうひとつ特筆すべきは紅一点ベーシストEliza Lamさんのすばらしいルックス。粒ぞろいの楽曲、味のある演奏がひたすら飛び出す好盤で、日本盤だしてくれてP-Vineありがとうです。オーストラリア産ではGotyeSeeker Love Keeperに、Oscar + Martinという2人組もよかった。南半球やばい。 見逃してちゃいけない。

23.Man Man / Life Fantastic
トム・ウェイツやケイト・ブッシュ、ウィルコ、ティナリウェンといった大御所のリリースを中心に、今年も元気だったANTI-に所属するアヴァンギャルド楽団による4作目のフルアルバム。ブライト・アイズ/Saddle Creek周りの辣腕マイク・モーギスをプロデューサーとして迎えて築き上げたサウンドは、この評曰く"Tom Waits circus - madhouse pop"。過去作にあった規格外の勢いはそのままに、うまく整頓された音はカラフルさもアップ。しゃがれ声で吠えまくる変調連発フェスティヴァルは万人にとってフレンドリーな形へと進化した。一見イロモノのようで、タイトル曲歌詞に明らかなとおり惨事にもユーモアで応えるタイプの誠実な音楽。すごくライブ観たいよ。


22.CocknBullKid / Adulthood

デヴィッド・バーンのこれミューのこれに通ずるものがあるジャケ…はちょっとキモイけど、ガーナ系イギリス人女性による、もしもしレコーズ印な弾けたパワフル・ポップな一枚。チリー・ゴンザレスやジョセフ・マウント(メトロノミー)などなどゲストも豪華で、自身初となるアルバムのタイトルに「成人期」なんてつけちゃうあたり乙女チック。まだ粗削りなところもあるが、伸びのある歌声が痛快で恰幅のよさにも無限の将来性が窺えるし、次の作品はとんでもないことになりそうで期待大。ジャネル・モネイとUKツアーを廻ったそうだが(ツーショットないかな)、アデルとも機会があれば1曲ヘヴィなデュエットをお願いしたい。


21.The Dø / Both Ways Open Jaws

フランスでは前作でアルバム・チャート一位も獲得している、ダンとオリヴィアの男女二人組(2人の名前の頭文字をとってDøってセンスも可愛い)。多幸感溢れる突き抜けっぷりを聴かせる「Too Insistentは今年随一の最強トラックだが、甘さ一辺倒ではなくフリークアウトした姿が本性…かと思えば華麗なオーケストラも鳴り響き、のどかでフォーキーな曲も収録されている。あふれんばかりの教養が見え隠れするゴッタ煮ぶりだが、クラシック、コンテンポラリー・ミュージック、チャールズ・ミンガスやフィーヴァー・レイ、ビョーク、ジョアンナ・ニューサムetc..から特に影響を受けている(みたいなことが、全曲試聴できるsoundcloudのページに書いてあった)。