2011年12月31日土曜日

きちくまの2011年ベスト・アルバム30選 その4 #3-1



3.White Shoes & The Couples Company / Album Vakansi

一応先に註釈しておくと、本国インドネシアでは昨年発表されていた作品だが、日本とアメリカでは今年リリースされたので、遠慮なく今回の30選にも加えさせていただく。
本作の解説の依頼をいただいてからというもの、今日まで思い出しては取り出して聴き入ってしまう愛聴盤になってしまった。英米のロックにはない、エキゾチックで素朴な陽気さと渋谷系も真っ青の都会的洗練が絶妙なバランスで融合しているのがすばらしい。本人たちの佇まいにも惚れ込んでしまったし、曲のクオリティーも高く、夏に聴きたいパワフルなソフトロック。これは5年ぶりとなる2作目のアルバムでいい意味での脱インディー色を果たし、楽曲のアレンジも華やかに。こういう爽やかな音楽こそラジオで流れてほしい!




ローリング・ストーンズ紙(米のほう)が選んだインドネシア・ソングのオールタイム・ベストにも前作(こちらもぜひ聴いてね)収録の名曲「Senandung Maaf」が129位にランクインしているところからも国民的なインディー・バンドであることがうかがえるが、同じく121位にランクインしている伝説的歌手Fariz RMの「Selangkah Keseberang」を本作中で本人を招いてカヴァーしていたり、150位のMocca(こちらもかの地で名を馳せる素敵なギターポップ・バンド)の2011年7月のラスト・ショウで共演を果たしていたりと、調べれば調べるほど現地シーンの相関関係が見えてくるのも新鮮でおもしろかった。
このアルバムは文句なしの傑作だし詳しい話はぜひ日本盤を手にとって解説を読んでもらえると幸いなんですが(宣伝)、とにかくこの超かっこいいバンドを日本でも観たいです。生で拝みたくなること請け合いのライブ動画その① その②。あと、ヴォーカルのAprilla Apsari嬢はバイク好きであると同時にイラストのセンスがとんでもなく抜群というのも萌え情報として付け加えておこう。








2.Ventla

かつてプラモミリオンセラーズ名義で2枚のアルバムを残している鈴木周二氏によるブログ「買ったCD」(まんまですな)を一時期愛読していて、ここからメンヘラ歌手Polly Scattergoodやウルグアイの天才SSWのMartín Buscagliaだったりを知ることができて大変ありがたがったのだが、今年に入ってパタっと更新が止まってしまった。あららと心配していたら、更新に飽きたので変わりに音楽を作ると表明。そうして突如始まったプロジェクトが"宇宙船"を意味するというVentlaである。
tumblrにあるように100枚のフリー・ダウンロードできるアルバムを作ることを宣言し、実際に7月に最初の3枚が発表されてから大みそかまでに10枚のアルバムが発表、掲載されている。とんでもない制作スピードだ。
キャッチーながら毒とひねりをもつメロディーとヘタウマな歌い回し、一曲の短さと情報量の密度の濃さ…などの特徴的な作風はそのままに、エコーの効きまくったメランコリックなシンセ・ポップへと接近。露骨にチルウェイヴを意識した音世界を展開している。90年代アイドルポップやハロプロの熱心なファンでもある(こんなブログもされているし、プラモ~時代にはMy Little Lover「Hello Again」の秀逸すぎるカヴァーを残している)氏の手による哀愁メロディと多種多様の機材(右下に記載)を駆使したドリーミーな音響(かつてのトイポップ的な妙味も随所で顔を出す)のコンビネーションが心地よすぎて、どこか昔のSFにも通じる懐かしさを訴えかけてくるよう。
今年はネットレーベルやらbandcampやらの盛り上がりが見逃そうにも見逃せず、海外ブログも巡回しつつフリー・ダウンロードできるアルバムやミックステープを漁りまくってみたが、Ventlaはアートワークもハイセンスだし(※追記→メロディや歌詞より先にアートワークありきとインタヴューで答えてる!!)、企画も内容も世界中のどれよりも正直一番おもしろかったし感情移入できた。90年代渋谷系の時代にデビューし、最新の音楽も聴きまくり流行を押さえている方だからこその懐の深さ。実際、ネット上でも当然のように話題になり、第三者によるVentla音源オンリーのmixもつくられている。
とりあえず現時点で4時間近い音源が発表されているわけだが、楽曲でいえば「匍匐前進」(『paralyzed』)「twilight boombox」(『paracusia』)「trig」(『ten』)あたりが特によい…っていうか個人的に好き。氏のlast.fmによるとBuono!をめちゃくちゃ聴いているみたいだし、マックス・ツンドラともこんなやりとりをしているし、好きになる要素しかないです。






1.Architecture In Helsinki / Moment Bends

長々とここまで書き連ねてきたが、今年一番嬉しかったのは昔から大好きだったこのバンドが復活して文句なしの最高傑作を届けてくれたことだ。先行発表されたシングル「Contact High」はそれから一週間で50回くらいリピートしたし、アルバムもお腹いっぱいになるまで聴いてるつもりで未だにぜんぜん飽きない。これが万人にとって今年を象徴するアルバムになりっこないのは俺だってわかってるが、一番楽しくてポップなアルバムということならこれを推すしかない。マジでカムバックしてくれてありがとう。

03年に最初のアルバム『Fingers Crossed』をリリースしたとき、オーストラリア・メルボルン出身のこのバンドには8人もメンバーがいた。リコーダーや木琴にフルートなどを持ち替えながら、和気あいあいとアンサンブルを奏でる典型的なトゥイーポップ・バンドだった。次の『In Case We Die』は賑やかさを維持しつつもダンサブルな色合いも強くなったコンセプト作で、対となるリミックス・アルバム(ホット・チップやDAT Politicsも参加)も充実した内容となり、kitsuneのコンピに曲が収録されたりもした。三作目となる『Places Like This』はPolyvinylから。野性味あふれるエレクトロ・ファンク路線へと変貌し、トロピカル風味は2011年の空気を先どっていたと言えなくもないが、実際このころには初期の可愛らしさが抜けて別のバンドみたいになってしまい、作品のクオリティーは依然として高いもののメンバーも2人減ってしまう。
来たるべき4作目は『Vision Revision』になるというアナウンスが流れてからしばらくして、公式ページの更新のほとんどが止まってしまう。煮詰まった予兆は三作目からのEP『Like It Or Not』に収録された「Beef In A Box」あたりで当時から感じられたが(プログレばりに凝っているファンク・ナンバー。俺は好きだけど…)そこからなんとか持ち直し、2年の年月と辛苦をかけて本作はつくられた。気がつけばバンドは地元の優良レーベルModularに移籍をはたし、メンバーはさらにもう一人減っていた。




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写真で見比べても結構な変化だ。老けたなって正直最初は思った。ピッチフォークは本作『Moment Bends』のレヴュー冒頭で読者にこんな疑問を投げかけている。
早熟でおませなトゥイー・バンドがいつか直面する問題がある。"どのように成長して、おなじみの鉄琴とお別れするか?"
たしかにこれまでAIHの売りといえばチルディッシュな無邪気さだ。過去のPVを観ればそれがよくわかる。メンバーたちがカメラの周りを笑顔でぐるぐる回る「It' 5」。トランポリンで跳ねまわる「Hold Music」。これらに比べれば、本作からの「Contact High」で観られる80年代チックなファッションの紳士による寸劇は若干元気がないかもしれない(楽曲は最高だけどな!)。ジャケットのデザインもこれまでのカラフルなものに比べるとやや精彩を欠いていると思う。
だが、紆余曲折を経ての精力を注いだリリースだけあってとにかく曲の粒が揃っている。80年代風シンセのきらめく虹のようなサウンドも気持ちいいが、本作の(そしてこのバンドの)キモは息の合ったコーラスワーク。男女混声でシンセのフレーズとうまく重なりあい、極上の快楽性を生みだしている(「YR Go To」「Sleep Talkin'」あたりの楽曲に顕著)。本作からは唯一、08年時点で発表されていたシングル曲「That Beep」は当時ピンとこなかったが現在のシンセ・ポップ再興を予期していたかのような節もあるナンバーで、気がつけば紅一点になってしまったKellie Sutherlandの歌声はほぼ全編で大活躍だ。
結果的に隅々まで手が込んで均整のとれたちょっぴり作品となっていて、無邪気だったころが恋しくなくもない。でも、いい歳を迎えてしまった大のオトナが「僕は脱獄者/君も脱獄者」と歌う、とびきりハッピーでバウンシーな「Escapee」を聴いているとそれだけで幸せな気持ちになれる。ちなみにその曲のビデオは親と子の葛藤や巣立ちを題材に扱っている。新進気鋭のニコラス・ジャーやサリー・セルトマンによるリミックスも話題になった「W.O.W.」歌詞もステキだ(たぶん妊娠というか、子を設けることの感動についての曲だよね)。立派に老けて大人になったけど、相変わらず夢見がちで、ロマンチックでヘンテコなことも考えてる。たまに真剣なこともマジメに考える。そういうのに弱いもんで。

きちくまの2011年ベスト・アルバム30選 その3 #10-4

俺だけが感動の年間ベストもそろそろ大詰め。めんどくさくなってきて11位の作品を1位にして残りもぜんぶ繰り上げようか一瞬悩んだが、そんなことしてもしなくてもいつか人は死ぬし、大晦日の夜はぼっちで指咥えて紅白でも観てるんだろうな。あゆ頑張れー。

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10.TV-Resistori / TV-Resistori

IslajaやLau Nauなど日本でも人気のミュージシャンを擁し、ポスト・ロック/アヴァンギャルド寄りなレーベル・カラーで知られるフィンランドのFonal Recordsにおいて特異な地位を築いているバンドの三作目。"テレビの抵抗器"というバンド名のとおり、元々はキーボード主体の緩いローファイ・モンド・ポップを奏でていた彼らだが、機材類のトラブルやメンバーの変遷、そして前作から本作までの5年に及ぶインターバルなどの事情からスタイルを変化。アメリカン・ルーツ音楽や、ベルセバなどのインディー・ギターポップからの影響を反映させたという本作では生楽器主体の素朴なアンサンブルを展開。
まあ、どこをどう聴いてもベルセバよりはThai Pop Spectacular(古いタイ・ポップのコンピ盤)の世界観のほうがまだ近いというか、スタックリッジが田舎のビートルズならこちらは辺境のトゥイー・ポップ奇形児。フィンランド語の響きと屈折した曲調、ミドルテンポ主体の絶妙に微妙な構成、どこか牧歌的な男女混声コーラス…などがビザールな化学反応を起こし、特筆すべき曲もないのにリピートせずにはいられない中毒性を秘めている。誠実な作品だと思うが珍味として味わうのが吉。流行りの青春ギタポに食傷ぎみな人へ強くおすすめ。
◆Tv-resistori: Funtsi
◆Tv-resistori: Voi ei, ei voi olla totta


9.Summer Twins / Summer Twins

仕事もロクにせずに遊んでばかりいた猛省すべき一年だけど、今年に関してはマックス・ツンドラ関連の諸々とこのバンドのリリースに携われただけでも光栄だし誇りに思っている。一年ちょっと前に彼女たちの存在を知り、フリー・ダウンロードできるEP(本作の日本盤ボーナストラックにも一部収録)を耳にして、これが日本に紹介されなきゃウソだとレーベルに進言。本当に店頭に並んでしまい、おかげさまで好評です。ありがたや。
愛くるしいルックスと世界観、女子力抜群のファッションセンスにノスタルジックで甘酸っぱい音楽性の豊かさ…などブラウン姉妹のスター性は群を抜いているだけに、最初に本作のサンプル音源を聴いて全曲モノラル録音だと知ったときはブったまげたものですが、かわいい顔して甘ったるさ一辺倒に媚びず、ハードコアな一面をときおり覗かせるのも惚れどころ。本国アメリカでの所属先であるBurger Recordsはマイナーながら良質なバンドの宝庫で、カセットでのリリースにも熱を入れ、しかもパワーポップを中心に眠れる名盤の再発も活発(モンチコンのこの記事に詳しい。Milk 'N' Cookies最高!)。その流れか、本作のプロデューサーは誰もが知る伝説のハードコア・パンク・オリジネイターである、あのジャームスのドラマーDon Bolles! リリースが遅れるほどの難産レコーディングだったそうで、その甲斐あって出だし好調の一作。もう一皮むけてほしいけど、今だってもっと話題になっていいと思う。ビデオもとーっても秀逸。
◆I Don't Care(FREE DL)
◆Summer Twins - Crying in My Sleep
◆The Good Things
◆一部試聴(レーベルのページ)
◆日本語インタヴュー THE RAY Vol.013 014~015P(from here



8.Starfucker / Reptilians

元々はポートランド出身Josh Hodgesのソロ・プロジェクトとしてスタートしたこのバンドは、00年代の前半に腐るほどあった"良心的な(≒退屈な)"インディー・ソフト・ロック作、そこから一転エレクトロ・サウンドを導入した野心的なEP『Jupiter』を経て名門Polyvynalに移籍。ワイバーン飛び交うファミコンRPG調なジャケットも狙いまくりな自身2作目となるフルアルバムでは、ダンス・ポップからエレクトロ・シューゲイザー~チルウェイヴっぽい音楽性にまで発展していく…って、節操なさすぎる! 中学生レベルのバンド名(ストーンズのボツになった楽曲名が由来。自分の世代的には、先にNINの大名曲を思い出してしまう)と同様に、拘りより先に流行と評価に飛びつく(言いすぎ?)軽くてスノッビーな執念は見事だが、それ以上に見事なのは曲作りの才能で、最初にアルバム序盤の「Julius」「Bury Us Alive」におけるきらめく電子音の渦を浴びたとき気持ちよすぎてどうにかなってしまうと思った。MGMTあたりにも通じるヒッピーライクなファッション、作中に思想家/研究家のアラン・ワッツのダイアローグを挿入するセンスなど鼻につくところ盛りだくさんで、どうしてこんなに好きになったのか自分でも謎だが、どこか安くて俗っぽいセンチメンタリズムに涙してしまう。この写真とかもチャラくて泣けるもの。にしても、今年のPolyvinylはディアフーフ、カシオキッズ、Loney Dearと良作ぞろいだった。
あと今さらの話をすれば、先述したEP(09年作)に収録のシンディ・ローパーのカヴァーは今もいろんなところで耳にする定番で、あらゆる女子がキャッキャと跳ねる鉄板トラック。スピンすればモテること請け合い。俺にもファックさせてよ。



7.Sondre Lerche / Sondre Lerche

10代でデビューを果たしたこのノルウェー・ベルゲン出身のSSWは早熟なだけでなく移り気なアーティストで、00年代を通して流麗なポップスからチェット・ベイカー風の歌ものジャズにダンサブルなギター・ロックまで、本人のルーツやそのときの気分をダイレクトに作品に反映させつづけてきた。
原点に立ち返って華々しいオーケストラル・ポップを魅せた09年の大傑作『Heartbeat Radio』につづく本作は、彼が近年活動の中心地としているブルックリンで隆盛を誇るインディー・ロックからの影響がモロに露見される野心作となっている。アニマル・コレクティヴオーウェン・パレットの楽曲のカヴァーを発表し、本人も羨望交じりにその魅力を公言してきたが、本作ではプロデュースに盟友Kato Ådland(ベルゲン・シーンを支える才人で、Major Seven & The Minorsとしての活動も)のほかにアニマル・コレクティヴやディアハンターetc...との仕事で知られる売れっ子Nicolas Vernhesを起用。洒脱なコード進行や達者なメロディ・メイクといった持ち味が生々しくてときに暴力的なアレンジによって強化されており、バカラック調の冒頭「Ricochet」で鳴るドラムの響きや、「Go Right Ahead」での耳つんざくようなギターなど、驚異的に鳴りのよい録音にも唸らされる。従来よりもハードボイルドでヒリヒリした仕上がりとなって、みずからの名をアルバム・タイトルに冠したのも必然といえる(本作が嫁さんの名前に由来する自身のレーベルMona Recordsからの初リリース作というのも関係あるだろう。ちなみに嫁さんは女優で、ソンドレ作品のPV監督も務めている)。
弾き語りメインの「Domino」を聴いてもわかるように、技巧派SSWとしては特筆すべきグルーヴィーなセンスもこの人の長所で、そのあたりはライブでもスクリッティ・ポリッティをカヴァーしていたりするし本人も自覚的なのだろう。ピッチフォークの「The Worst Album Covers of 2011」にも見事選ばれてしまったが、個人的には色合いよりも生え際が気になってならない。


6.Thomas Dolby / A Map of the Floating City

先行リリースされたEPを聴いたときはここまでの内容になるとは予想だにしなかったが、80年代を代表するテクノ・ポップ「彼女はサイエンス」から29年、フルアルバムとしては92年の『Astronauts & Heretics』以来となるカムバック作は楽曲の充実ぶり以外にも画期的なトピックが多く、最高傑作と呼んで差し支えなさそうなほどの充実ぶりを誇っている。
かつてマッド・サイエンティストと呼ばれた鬼才は、ここではアダルト・オリエンテッド・シンセ・ポップとでも称したい、年齢を重ねたからこその落ち着いて味のある楽曲を披露。ビートルズ好きの男とティアーズ・フォー・フィアーズのファンである女のふたりが恋に落ち、だだっ広い地平を旅していく…ブルーグラス・ナンバー「Road To Reno」の曲調や歌詞に顕著なとおり、かつてのファンキーさも維持しつつどこか懐古的なフィーリングが心地よい。“Urbanoia”“Amerikana”“Oceanea”の三章仕立てとなっている本作はアレンジも実に巧妙で、レジーナ・スペクターをフィーチャーした攻撃的な「Evil Twin Brother」、蛙の鳴き声を口琴で表現した(演奏しているのはイモージェン・ヒープ)「The Toad Lickers」、オートチューンを用いた穏やかな「Oceanea」(元フェアグランド・アトラクションのエディ・リーダーとのデュエット)と、曲ごとに豊かな表情を見せる。
また、ファンタジーとしてのアメリカーナ追求という“Amerikana”のテーマやアルバム全体のムードや節回しが、かつて彼がプロデュースを務めたプリファブ・スプラウトの作品を少なからず想起させるところもあって涙せずにいられない(不器用なデモ音源がそのまま発表されてしまったような09年の『Let's Change The World With Music』も、今のトーマスが携わっていればまったく違う作品になったんだろうな…)。一時期は音楽活動を引退し、IT会社を立ち上げ音声ファイルや携帯電話の着信音などを手掛けていた彼だが、そんなキャリアを活かして本作をサントラとしたゲーム・サイトiPhoneアプリをプロモーションに活用したり、ファン・フォーラムで音源を先行リリースしたりと音楽業界のあり方に一石を投じている。ってことでアプリは俺も前にやってみたけど、蛙がどうも気持ち悪くてなぁ…。洋ゲーってむずかしいよね。


5.The Elected / Bury Me In My Rings

2011年に入ってライロ・カイリーが事実上の解散状態にあることがアナウンスされたが、彼氏とよろしくやってるジェニー・ルイスに隠れて、バンドのもう一方の頭脳だったブレイク・セネットは(少なくともネット上では)ここ数年は消息不明状態だった。本来は彼のサイド・プロジェクト的な位置付けだったThe Electedとして三作目となるこのアルバムのテーマは"死"。アルバム・タイトルも"輪のなかに僕を葬り去って"とでも訳せばいいだろうか。06年の前作が西海岸の陽気が全開な『Sun, Sun, Sun』だっただけにそのギャップにも面喰ってしまうが、アルバムを再生してのっけから聴こえてくるのが"君を愛するために生まれてきたんだ/これからもそうするつもりだよ/たとえ別のいい人が君にいるんだとしても"(「Born To Love You」)というほろ苦いフレーズなのだからたまらない。
多くエリオット・スミスに喩えられ続けてきた儚い歌声と遁世的な浮遊感はライロ・カイリー作品においてもささやかに輝いていたが、ここでは一層の諦観に満ちている。かといって息苦しい作品かといえばそうでもなく、彼一流のソングライティングの才が冴えわたって暗いムードも重くならず、気楽に聴きたくなる軽やかな旨みに溢れている。今回とりあげる30枚のなかでも本作はぶっちぎりで地味だが、ほとんどの曲でサビ後に粋な転調が用意されているのが嬉しいし(「Look At Me Now」がわかりやすい例)、繰り返し聴くことでじんわり沁みてくる。少なくともレコーディング作に限っていえば、ラフな路線に一辺倒なジェニーに比べて、彼の丁寧で実直なスタンスはあまりに過小評価されすぎだろう。


4.ツチヤニボンド / 2

自身のブラジル音楽趣味を追求することで日本のシティ・ポップスにも通じる洗練ぐあいと妙な違和感を醸し出していた前作に比べ、て、4年ぶりとなる本作のもつ疾走感は一見わかりやすくカッコいいがやはりどこかおかしい。テレヴィジョンやラモーンズあたりのパンクに割と最近になって感化されることで生まれたサウンドとのことだが、中心人物である土屋貴雅氏はパンクのどこをどう聴いてこんな音を作り上げたのだろう。そもそも本気でCDを売るとするなら畦地梅太郎の版画をジャケに用いるセンスは渋すぎるし、AIR JAM帰りの客にこれを聴かせてもパンクだとあんまり認めてもらえないだろう。
12月に催されたディスクユニオン吉祥寺店でのインストア・ライブでレコード店に通いつめてきた思い出を土屋氏は語っていたが、たとえばロッキング・オンやガイド本みたいな教科書よりも自分の嗅覚を頼りに、限られた手持ちで少しでもいい音源を入手することの執念、試聴機への愛情がそこからは感じられた。
昨今の若いミュージシャンがインターネット・ネイティヴならではの感性や手法で情報や教養の取捨選択をスマートに行っているとすれば、土屋氏や他のメンバーたちのアナログで前時代的な音楽への執念と膨大でリスニング量(あるいはイレギュラーなリスニング遍歴)を血肉化して基礎体力とし、常人の発想では本来繋がらないものを強引にくっつけて噛み砕く腕力と咀嚼力でもって、猛烈なテンションや跳躍力に繊細なリリシズムまでを生みだす気ままな武骨さがこのアルバムにはある。「○○系」と手ごろなジャンルに安易に収まらず、オンリーワンな「ぼくのかんがえたパンク」を徹頭徹尾に貫いているのが本作の魅力。単なるトレースや二次創作とは異なる、流行に乗れない不器用な自分史でありながら勘違いを恐れぬダイナミックなセンスが頼もしく、聴いたことのない音楽を鳴らそうとする姿勢はいまどき(アティチュードとしての)結構なポストパンクっぷりでもある。
柔軟で緩急自在の演奏も聴きどころで、クラウトロック的なリズムと南米音楽の享楽感がブレンドされたインストの「クロフネ」にはじまり、乾いたスネアの音を軸にミニマルな演奏と一転しての急転調が刺激的な「花子はパンク」、間奏のつんざくギターソロも強烈な"まともな"パンク・ナンバー「ふわふわ」、トライバルなリズムが妖しくファンキーな密室R&B「メタルポジション」と、前半だけでも印象的なナンバーが揃っている。パンクパンクと書いてきたがアルバム後半には前作譲りの静謐でメロディアスな曲も収録されており、そのなかでも珠玉のハイライトはやはり、アーサー・ラッセルとミルトン・ナシメントが舵をとる幽霊船でひとりギター片手にくだを巻いているような「夜になるまで待って」の零れ落ちんばかりにおセンチな響きだろう。一度食事の席をともにしたとき土屋氏は(意外ながら)ブルーノ・マーズの歌唱力を賞賛していたが、いやいや氏のファルセットもしんみりくるのだ。あとはもう少しライブをやってくれれば…。

2011年12月23日金曜日

きちくまの2011年ベスト・アルバム30選  その2 #20-11

20. Russian Red / Fuerteventura
現地でリリースされて全曲試聴を聴いたとき、スペインのミュージシャンってだけで日本盤を出さなきゃアホだろって内心思ってたんですが、ここにきてラジオではフエルテベントゥーラより愛をこめたパワープッシュ状態で、逆に来日公演を見逃してしまった俺が一番アホだったという結末に。ファイストもそうだけど、女性SSWの日本盤後だしリリースがこれからのトレンドなんだろうか。オトナの事情はわからないが、これはベルセバ人脈を従え一気に世界制覇をもくろんだ無敵艦隊のようなポップ・アルバム。でも名曲「Cigarettes」は録り直したのより元のシンプルなアレンジが好き。

19. YACHT / Shangri-La
ユートピア/ディストピア思想を題材につくられたコンセプト作。DFA移籍&女性ヴォーカルのクレアさん加入後のYACHTは、アホでキュートな作風と作品のクオリティーが理想的なバランスでたまらん。あの伝説のBlack Devil Disco Clubとの交流なども経てバンド・スタイルでつくられた本作は、冒頭二曲こそ威勢がいいものの神懸かり的な前作と比較するとややスケールダウンした印象。しかし、ラストのタイトル・トラックボンクラな歌詞("もしユートピアを建てたら、君も遊びにきてくれる?")も併せて泣けるし、なんだかんだ必聴。限定版のユルい宣伝ビデオも最高! チャットモンチー以来の傑作シャングリラだ。ラーラーラーラーラー♪

18. Noah and the Whale / Last Night on Earth

上半期に聴きまくったアルバムその1&青臭さオブ・ザ・イヤー。こちらもフジロックで観ることが叶わず残念だった。UKアンタイ・フォーク時代より、ダイナミックに飛躍したこちらが断然好き。ブルース・スプリングスティーンやビートルズの「Don't Let Me Down」を取り上げながら" And we'd sing and play / Simple three chord rock and roll "と歌う本作の象徴のような「Give it All Back」、薄暗い夜に少年は故郷を飛び出して、もう二度と帰らない「Tonight's The Kind Of Night」そして、まんまキンクス「Lola」すぎる「L.I.F.E.G.O.E.S.O.N.」! ちなみに、NYの暗黒裏番長ことElysian Fieldsも今年に入ってまったく同じタイトルでまるで作風の違うアルバムをリリースしていて、そちらも結構よかった。


17. Peaking Lights / 936

アルバム冒頭All The Sun That Shinesのベース・ラインが流れだした時点で傑作と確信したが、聴けば聴くほどずぶずぶハマってしまう底なし沼のようなミニマル・サイケデリック・ダブ。気だるくて、退廃的で、部屋のすみっこで腐ったバナナのような甘みもあるが、ちゃかぽこ鳴るチープ極まりないドラム・マシーンの音には覚醒作用も。あと、広がる景色が溶けるように反復していくノンビートのKey Sparrowが本当いい曲で…。Not Not Fun周辺はおもしろい。



16. Everybody Else / Wanderlust

元プッシュ・キングス! とかそういう事情は何も知らず耳にしたんですが(すいません)、強烈フック連発で今年耳にしたなかでもぶっちぎりに完成度の高いパワーポップ作。キラキラしたキーボードと曲進行が「ラジオスターの悲劇」を彷彿させる「Photograph」、鉄板パーティーチューンDifferentをはじめ泣ける曲ばかり。これとチープ・トリック『at武道館』と(来日公演もよかった)ウェリントンズの新譜が一時期のヘビーローテだった。今年はマフスも生で拝むことができたし幸せだったなー。


15. Veronica Maggio / Satan I Gatan
スウェーデンの今年5月13日付シングルチャートにアルバムの全曲がランクインし、12月現在もアデルなどと居座りつづける怪物ポップ作。元々は品のよく色っぽいソウルを得意とした彼女は、この作品でエレクトロもロックも呑みこんで大化け。どの曲も超キャッチーで、ロビン(このビデオよかった!)は評価するのにこちらは世界的にスルーなのが謎すぎる。最初のシングル「Jag kommer」は英語で"I'm coming"の意で、するどいギターリフとシンプルなトラックの産みだすグルーヴも強烈だが、指マンからピンセット、行ったりきたりを暗喩的に繰り返す卑猥なPVがすばらしく、ケイティ・ペリーの「Teenage Dream」などと並ぶ現代おセックルポップの金字塔だ(曲終盤の怒涛の盛り上がりもそういうことでしょ)。ちなみに彼女は今年で三十路。

14. Metronomy / The English Riviera

上半期によく聴いたその2。聴きすぎて今さら書くこともないが、スタイルを崩しすぎずにエレクトロの狂騒とおさらばして、ダンサブルだけどどこか黄昏た摩訶不思議な音世界を築き上げたバンド、中心人物のジョセフ・マウントという人はとても賢いんだなー、と(逆に頭でっかちの袋小路へハマってしまったように映ったのがジャスティス)。サマソニは見逃してしてしまったので、来年頭の来日公演は本当に楽しみ。

13. Twin Sister / In Heaven

前作の強みのひとつであったローファイ味を排除し、モンド/ラウンジ~ステレオラブ的な反復とディスコチックで緩い浮遊感に甘い歌心をより強調した意欲作。出だしの3曲で即死。ほんのり香るアジアン・テイストだったり、どこかいいとこ取りな小賢しさもチラつかせつつ、ずばぬけたアート・センス(このジャケもいいよなー、アナログ盤の購入を推奨)とAndrea Estellaの浮世離れした声およびルックスが反則的レベルなので文句のつけようもなく。あと彼女のtumblrも趣味よすぎ。ミンキーモモやセーラームーンが好きなのね。

12. 住所不定無職 トーキョー・ポップンポール・スタンダードNo.1 フロム・トーキョー!!! 
アイディアと引用とロマンスの宝庫だった「ベイビー!キミのビートルズはボク!!!」で虜になった身としては、輝く卑しさがスポイルされ、割と普通にロックしている『JAKAJAAAAAN!!!!!!』に(´・ω・`)ショボーンとなったが、つづく今年2枚目の"フルボリュームシングル"となる本作で王道をいく姿勢に感動してギンギンに再熱! 冒頭Magic In A Pop!!!に施されたストリングス・アレンジで明らかなとおり、もはや無職でも低収入でもないが、歌詞どおり踊りだしたくなる最強っぷり。カジヒデキやヒダカトオルもプロデュースに迎え、ひたすらイイ曲を演奏しまくるバンドは中央線界隈から東京の最前線へ殴り込み。「キスキス」はぜひBuono!にカヴァーしてほしい!

11. Eleanor Friedberger / Last Summer
過去にフランツ・フェルディナンドのアレックスと付き合ってたことでも有名なFiery Furnacesのお姉ちゃんのソロ作。アヴァンギャルド精神が逞しすぎるバンドの音の延長線上にありながら、色褪せた写真のような郷愁やSSW的な内省もチラつかせ、ようやく常人にとっての"ひねくれポップ"のラインに到達(本作がバンドの所属先であるThrill Jockeyではなく、Mergeからのリリースというのもミソ)。彼らの作品では、比較的メロディアスでとっつきやすい『EP』が一番好きだったのでこの路線は大歓迎。ややアイディア先行型の曲もあるが、それも含めて甘酸っぱくキュートにねじくれている。「Roosevelt Island」のベース・ラインとかすんばらしいよ。

2011年12月14日水曜日

きちくまの2011年ベスト・アルバム30選  その1 #30-21

気がつけば2011年も終わろうとしていますが、12月に入って貯金残高がとんでもないことになりCDとかレコードとか買ってる場合じゃなくなってしまいました。これから新しい音源と出会うまえに来年を五体満足で迎えられるかも怪しくなってきており、さっさと年間ベストも片づけて、思い残すことのないよう腹いっぱい風俗に通ってから死にます。俺達いつまでも悲しみ集めるルンペン(中野サンプラザのライブもスカンピンで行けなかったですけど、お疲れ様でした)。

先に書いとくと、(自分は例年そうなんですが)ポップでわかりやすいものと、わかりやすく変なものを中心に聴いてました。話題のあの本の影響もあってヒップホップも自分なりに楽しんだ一年でしたが、リリック聞き取れないし門外漢だしタイラーザ以下略の顔が怖いので外しました。ひとりで30枚も選ぶのは自意識過剰ですよね。わかってるんです。定額料金の底なし娯楽がインターネット。どうか見逃してやってください! 殴らないでください! うー、こうなったら不労所得ライフで三億円GETや!

※[アーティスト名] / [アルバム名]
※実際の曲をチェックできるよう文章の最後にリンクを貼りつけましたが、文中で貼っている場合は省略している場合もあります。また、ここで表記を統一すると面倒なので元々の動画のタイトルをそのまま掲載しています。悪しからず。

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30.V.A. / Red Hot + Rio 2
定番となったエイズ撲滅のためのチャリティー・コンピ・シリーズの最新作は、収録曲のオリジナルと特設ページ(の下のほう)に目を通せば60年代ブラジルのトロピカリア・ムーブメントについてあるていど知ったかぶりできてしまうほどの充実盤。ベイルートやオブモンなどインディーキッズ御用達のビッグネームも名を連ね、当時の生き証人たちとコラボを楽しむさまもユニークだが、その背後にはデヴィッド・バーン(Luaka Bop)やベックが歩んできた道があることも昔の曲を収録することできちんと示しており、トロピカルな音がクローズアップされがちな昨今の潮流を考えても自覚的で意義のある編纂。そういえばトン・ゼーの1stも今年再発されましたね。あと個人的にはヒタ・リーのこのアルバムも大好き。
◆03 Um Girassol da Cor do Seu Cabelo Mia Doi Todd & José González

29.The Sandwitches / Mrs. Jones' Cookies

ジャケ左の女性の髪形がイデオンの主人公みたいになってて発動編って感じがしますが(実物は全く違うし、案外歳食ってるけど)、これは元フレッシュ&オンリーズの人とかによるサンフランシスコの女性三人組による二作目のフルアルバム。おどろおどろしく奇怪なムードを演出するエコーに、神秘と素っ頓狂のあいだをゆく歌声やコーラス、USローファイ勢のなかでも群を抜いてヨレヨレの不思議アシッド・フォーク。マジカルだったりオカルトチックだったりするところはプログレ好きにまでアピールしそう。最近もこういう格好してるんでしょうか。本作もこれまでもジャケデザインがエクセレント
◆The Sandwitches- Lightfoot


28. The One AM Radio / Heaven Is Attached By A Slender Thread

かつて暗く厳かなラップトップ・フォークを得意としたインド系アメリカ人のリシケシュ・ヒアウェイは、本作でバンド・スタイルに転じ、奔放なビート・メイキングと持ち味のメロディセンスで、これまでとひとあじ違う"夜の風景"の描写に成功。前作とジャケットを見比べればその違いは一目瞭然で、先日の来日公演も(モミアゲ込みで)すばらしかったBathsや、anticonのエイリアスも参加の清々しい良作。価値観が転覆したことで生じたであろう開き直りのよさが痛快だ。詳しくはクッキーシーンに掲載された拙レヴューをご参照ください。


27.Trampauline / This Is Why We Are Falling For Each Other
お世話になってる某レーベルの方に教えていただき、すっかり惚れ込んでしまった韓国の女性シンセ・ポップ・ユニット。フジテレビ叩きみたいな(双方が)虚しい出来事もあったが、いわゆるK-POPとは別の、かの国の魅力的なインディー・ポップの土壌が自分にもようやくうっすらと見えてきて(たとえばマックス・ツンドラや新年早々に来日予定のダン・ディーコンも招聘しているSUPER COLOR SUPER、プロダクション・デシネからもリリースされた秋休みや、ele-kingにレヴューの掲載されたVidulgi OoyoOだったり)、一度きちんと調査してみたい。彼女(たち?)に話を戻すと、この動画で一発ノックアウト。ゆるくやわらかい電子音と飾らない佇まい。白いスニーカーが眩しいよ。

26.LOVE ME TENDER / Twilight

最初に聴いたとき「七色の鍵盤を軸とした夢世界フュージョン。ロリな歌声まで入ってノスタルジーときどきサイケ」とツイートしたが、10月のおわりに下北沢で観たこのミニアルバムのレコ発ライブで驚いたのは、曲のバリエーションと展開の豊かさ(音楽同様にフリーダムな観客の内輪っぷりにもビビったが)。ポップスがもつべき捻りと威厳と茶目っ気への強いこだわりに感服。あと、特に3.11直後のしんどいTL上で高木壮太氏のツイートにだいぶ励まされたし、あれがなかったら正直聴いてなかったと思う。日本でもこの手の企画をやってほしい。やろうよ。 

25.Dreams / Feelings 4 U

LAを拠点に活動するビートメイカーJesse PimentaによるEP。bandcampのページでは"dopewave"や"sample-wave"なんてタグがついているが、音の雰囲気でいえば(いまやすっかり売れっ子リミキサーになった)Star Slingerの流れも汲んでいる。所属先のネット・レーベルAbsent Feverについては今年いちばん更新を楽しみにしていたこのブログの記事で知ったが、未来を期待したくなる秀作ぞろいで、全音源がフリー・ダウンロード可能($1払って購入することもできる)。ちなみに、ポルトガルにもDreamsというまんま同名のバンドがいて、こちらもチルウェイヴ以降なサウンドでよい! FreindsWeekendばりにややこしいぞ!
24.Oh Mercy / Great Barrier Grief

渋さや苦さも見せつつ、軽快なオールドタイミー・アコースティック・ポップを鳴らす豪メルボルンの4人組。バンド名からもどことなく香るディランチックというか生真面目なムードもよい(ダニエル・ラノワprod.のあのアルバム結構好き)。もうひとつ特筆すべきは紅一点ベーシストEliza Lamさんのすばらしいルックス。粒ぞろいの楽曲、味のある演奏がひたすら飛び出す好盤で、日本盤だしてくれてP-Vineありがとうです。オーストラリア産ではGotyeSeeker Love Keeperに、Oscar + Martinという2人組もよかった。南半球やばい。 見逃してちゃいけない。

23.Man Man / Life Fantastic
トム・ウェイツやケイト・ブッシュ、ウィルコ、ティナリウェンといった大御所のリリースを中心に、今年も元気だったANTI-に所属するアヴァンギャルド楽団による4作目のフルアルバム。ブライト・アイズ/Saddle Creek周りの辣腕マイク・モーギスをプロデューサーとして迎えて築き上げたサウンドは、この評曰く"Tom Waits circus - madhouse pop"。過去作にあった規格外の勢いはそのままに、うまく整頓された音はカラフルさもアップ。しゃがれ声で吠えまくる変調連発フェスティヴァルは万人にとってフレンドリーな形へと進化した。一見イロモノのようで、タイトル曲歌詞に明らかなとおり惨事にもユーモアで応えるタイプの誠実な音楽。すごくライブ観たいよ。


22.CocknBullKid / Adulthood

デヴィッド・バーンのこれミューのこれに通ずるものがあるジャケ…はちょっとキモイけど、ガーナ系イギリス人女性による、もしもしレコーズ印な弾けたパワフル・ポップな一枚。チリー・ゴンザレスやジョセフ・マウント(メトロノミー)などなどゲストも豪華で、自身初となるアルバムのタイトルに「成人期」なんてつけちゃうあたり乙女チック。まだ粗削りなところもあるが、伸びのある歌声が痛快で恰幅のよさにも無限の将来性が窺えるし、次の作品はとんでもないことになりそうで期待大。ジャネル・モネイとUKツアーを廻ったそうだが(ツーショットないかな)、アデルとも機会があれば1曲ヘヴィなデュエットをお願いしたい。


21.The Dø / Both Ways Open Jaws

フランスでは前作でアルバム・チャート一位も獲得している、ダンとオリヴィアの男女二人組(2人の名前の頭文字をとってDøってセンスも可愛い)。多幸感溢れる突き抜けっぷりを聴かせる「Too Insistentは今年随一の最強トラックだが、甘さ一辺倒ではなくフリークアウトした姿が本性…かと思えば華麗なオーケストラも鳴り響き、のどかでフォーキーな曲も収録されている。あふれんばかりの教養が見え隠れするゴッタ煮ぶりだが、クラシック、コンテンポラリー・ミュージック、チャールズ・ミンガスやフィーヴァー・レイ、ビョーク、ジョアンナ・ニューサムetc..から特に影響を受けている(みたいなことが、全曲試聴できるsoundcloudのページに書いてあった)。

2011年11月6日日曜日

DJをしますぜ×2

皆さんこんにちは。ベンフィーバーもひと段落しノンビリのほほんしていたところに、楽しそうなイベントに2つもお誘いいただきまして、わたくし小熊俊哉(リスペクト沖野修也)がへっぽこDJとしてお手伝いさせていただきます。ヘイヘイ。




なんだかおっかないフライヤーですが、11/17(木)はオーストラリア出身の2バンドThe Rational AcademyHappy New Yearを中心に、豪華対バン&DJ盛りだくさんなイベント@渋谷WOMBにお邪魔します。前者は「まるでMy Bloody Valentineのがれきの山を泳ぎまわるPavementのように暖かくてロウファイ」、後者は「エレクトロニクスを用いたドリーミーかつミステリアスなポップ・ソング」(もろコピペですいません)! 期待大ですね。

さらにマヘル・シャラル・ハシュ・バズ、にせんねんもんだいが主催する美人レコードのメンバーによるTHEY(彼等)broken little sister、Bertoiaとしての活動でも著名な根岸たくみ氏率いるswimmingpoo1…などなど、日本のインディー/アンダーグラウンドなシーンを賑わすアクトに、(自分以外は)実績たっぷりな凄腕DJ陣! チケ代もADV 2,000円 / DOOR 2,500円とフラっと遊びにいけるお値段だ! すごいじゃん!! 先述の豪出身2バンドは11/22(火)にも渋谷UNDER DEER LOUNGEで出演予定とのことで、こちらも含めてぜひぜひぜひぜひ!

http://electric-fuzz-efz.blogspot.com/ (出演者の顔写真まで載ってるよ)





つづけて11/26(土)には高円寺のamp cafeにてラウンジイベントに参加します。以下スーパーコピペ。

1/9のYoung Pop Dream 開催に向け、amp cafeにて、プレイベントを開催!!
若手DJ陣のフレッシュな選曲と、アートスクールなどのクリエイター達の、賑やかな☆展示が溢れる、おもちゃ箱?のような空間へ!!まだ公開前の映画が観れたり、気鋭のshop、more recordsによるセレクトミュージックも体験。美味しいparty foodも充実、普段ライブハウスやイベントに来ない人も気軽に来てみて!!YoungでPopでDreaming、きっと新しい出会いや発見があるはず・・・!?学生の人には嬉しい学割制度も!!

…とのことです! 勝手なイメージですが、なんだか美男美女が勢ぞろいしそうなイベントですね。 美は美を呼ぶわけできっと客層もYoungでPopでDreaming。新しい出会いに目がない美少女ハンター・小熊も胸キュンソングを連続スピン。オシャレ音楽の力で10tトラックで轢かれたあとのように醜い顔面(タイヤ顔)を全力でごまかします! 魔法を信じるかい? 

ちなみに(amp cafeと隣接の)高円寺Highで催されるShoegazer、Drampop、Post Rockの定番イベント、Total Feedbackとのコラボ開催で、当日はどちらにも入場可能とのこと! ライブも楽しみましょうー。


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以下、両イベントの詳細コピペしておきま。


Australian Noise Pop Show 2011
[Rational Academy & HAPPY NEW YEAR Japan Tour 2011]

2011.11.17(Thu) @渋谷WOMB (http://p.tl/_geE)
http://www.womb.co.jp/#!/live/2011/11/17/australian-noise-pop-show-2011.html
OPEN 18:00~
ADV 2,000円 / DOOR 2,500円(D別)


LIVE>
Rational Academy
HAPPY NEW YEAR
Maher Shalal Hash Baz(マヘル・シャラル・ハシュ・バズ)
THEY(彼等) 【Gt/Vo,千早(ふくろ) / Dr,姫野(にせんねんもんだい) / Synth,ヨッシー(Husband Is Funny,Isn’t It) / Ba,りんちゃん(OL)】
broken little sister
pagtas(坂田律子 + タバタミツル)
cuushe
swimmingpoo1
ANISAKIS


Music Selectors>
小熊俊哉(COOKIE SCENE)
chicchi(bluestars night!)
hitch(EGURI)
ツノダ
@k(my bloody valentine night)
hahasdisko


VJ>
寺田(HUH)

TICKET>
e+ http://p.tl/FzXQ
pe@p-ent.com


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Young Pop Dream Lounge at ampcafe

11/26 sat. 17:30-22:00
at  amp cafe(高円寺HIGH隣)
http://www.koenji-high.com/ampcafe/

door 2000/ day2500 (+1d)
★学割制度あり
door1000(+1d)

【DJ’s 】
■moyachi
■molenu
■ume rock(beepluck)
■aoki (bullet's マイブラナイト)

【girl's DJ】
■emiko:)
■きよし

【Guest DJ】
■小熊俊哉(cookie scine)

【music selector & DJ 】
■more.records 

【Live】
■hiromi sunaga

********
【Live paint】
■kao(astral camp)

【art】
■molenu
■220sec.
■ayako

【media art】
■マルヤマミホ

【clip】
■kyoko

【New movie-recomend】
■emiko:)

******
【Total "Food"back】
■The mariage blues
(oh!kawa (fun×3)&mick(make belive))
■スクリーマ”デリカ”新子
(molenu)

【Total Free market】

and more・・・

〜同時開催〜
高円寺HIGHにも入場できます
「Total Feedback」
11/26 sat. 18:00-22:00
at 高円寺HIGH 

【LIVE】
■ Al Van She's Coming
■ texas pandaa
■dario
■FU-MO
■civic

2011年10月31日月曜日

工藤鴎芽 『現代化が発明する窓その頃外に』(2011)



工藤鴎芽という京都の才女の魅力をもしも誰かに紹介するなら…さてさて、どこから触れるべきなのだろう。ただ者ならぬ雰囲気を思わす艶やかな出で立ちもさることながら、彼女はけっこうな多作家で、本人いわくの「<Low-Fi~オルタナティヴ> DTMer」として今の名義で単身活動をはじめた2010年7月から今日までに、フルアルバムを一作、EPを4作、シングルを4作、そのすべてを自主リリースしており、1年3カ月のあいだに50近くの曲を世に出していることになる。インターネット時代の自作自演家のなかでも、これはなかなかのハイペースといえるだろう。

「出してから気付いたんです、多作だって。ライブが少ないのでその分作る時間があるから、つい作っちゃう? みたいな感じで」(以下、発言部分は工藤本人によるもの)

軸となる音楽性に触れてみよう。90年代オルタナティヴ・ロックの影響を思わせるザラついたノイズ・ギター、不器用なところが逆にかがやく(平たくいえばヘタウマな)打ち込みの妙、いなたくも瞬間的にハっとさせられる瞬間の隠れたソングライティング。諦念と希望の狭間で揺れる彼女の声は恥ずかしがり屋が窓のすきまからつぶやいているようだ。妄想の蠢く内向的なガーリー・ポップの常でシャンソンやフレンチポップなどからの影響も色濃いが、00年代以降のインディー・ポップも通過した音の触感は通気性にすぐれた小気味よさで、楽曲制作にゲームボーイを駆使するような遊び心も微笑ましい(それについて訊くと、ディグダグやスパルタンXといったファミコン黄金時代のBGMのすばらしさを力説された)。

彼女の音源は(iTunesなどの経由で)海外からの注文が多いそうだが、それも頷ける新鮮なひきこもりポップだ。あるいは、そのチープなサウンド・プロダクションや電子音との戯れ方を指して“日本におけるチルウェイヴとの共振!”とか強引にこじつけられなくもないが(実際、そう言われることもあるそうで)、それについて尋ねたら「Psappってチルウェイヴですか?」と逆に質問されてしまった。また、学生時代にジュディマリなどをレパートリーにコピーバンドをしていたり、スピッツに強く心酔していたりという、ある世代にとっては実にベタなエピソードもおもしろい。

「(※スピッツについて)聴くうちになんか引きずり込まれるような感じというか、ふと気付かされる世界があって不思議! とか思って。詩も見てみると初期とかよく考えても解らんような感じに魅力を感じたり、音もすごい個性的」

「他の音楽をdisる気はさらさらないのですが、商業的に夢を売ってる感じが何か見え透いてて厭な感じするので。それで逃避出来て救われる人もいるのは事実ですが…私には出来ないことです」




かたや、今年7月にリリースされたEP『Mondo』では既存のローファイ色はほぼ消え失せ、ボサノヴァ~映画音楽~モンド/ラウンジ・ミュージックの流れを強く汲んだインストゥルメンタルの楽曲を展開。バックグラウンドの幅広さと作曲能力の飛躍的向上をアピールする異色作となっている。今回取り上げる 『現代化が発明する窓その頃外に』は10月10日にリリースされた(余談だが、彼女はゾロ目の日に作品をリリースすることに強いこだわりがある)現時点での最新EPで、さらなる成長を遂げた姿をみせる。

「コンセプトは『現在 外に』です。「(デビューから1年が経って)これまでのことを振り返ったときに内に籠ってた感じの作品が多くて、それでも独りでやるって決めた時から変わりたいという願望は相変わらずで、なんとも消化しきれない部分も多かったので、良い機会だし変わりたいと思うなら変わったろうやん、と。音に関しても退化しないようにと、新しい自分を探して頑張りました。唄い方も変えました」

全6曲は「Modernize」「発明する」「窓」「そのころ」「Output」「に」…と、EPのタイトルをそのまま分離解体したパーツのごとく名づけられている。冒頭の「Modernize」では、くたびれたギターの緩いストロークと背中を押して急かすようなビートの生むグルーヴに乗せて、ミニマルな言葉の断片が錯乱したまま乱れ飛ぶ。

滲んだ 揺れた  困つた 壊れた
誂えた(馨つて) 飾つた(選つて) 失つた(憶えて) 超えた(分解)

(「Modernize」)

「タイトル通り『現代化』をテーマに唄ってますが、詩の始めが着地点てわけではなくて循環してるんです。時代って日々現代化してくんだけど、結局懐古することもあるしカオスだって思って。街の景色も変わってくとこは凄いスピードだし。前に電車の窓から安いピンクのチープなラブホをみかけたんですが、そのすぐ横に墓地があったんですよ。駐車場じゃなくて。もう駄目だって思いましたね。話がずいぶん逸れましたけど(笑)、意図的に乱雑してる様をってことで。でも、ちゃんと繋がってるように取れる箇所もあると思います」

一転、「発明する」では神経症的で不穏な響きを携えたピアノとビートのループのうえで《愛の言葉も悲しい嘘も/誰もがびっくり同じ仕組み》と諦観に満ち満ちた歌が悪ふざけのようにおどる。そこからつづく「窓」で曲調はグっとファストになり、星屑のようにきらめく電子音と疾走感あふれるギターが、<窓>から覗くことしかできない少女の妄想こじらせ悲恋のいとしさと切なさを絶叫とともにパワーポップに昇華させている。

内緒のままでいいのさ/何となく覗いてたんだ
悲しく切ない恋のうた/はぐれたコラージュ/涙のワケは判ってるよ

(「窓」)

「(※恋愛について)うーん…。薬みたいなもんじゃないでしょうか。このまま明日キュン死ぬかもしれないって思ったり、切れたら切れたで、なんでこんなに好きやったんアホくさって恐いくらい冷静になったり。でも、人の事を死ぬ程考えるなんて素晴らしいと思います。魔法って比喩よく聞きますが、それも解るなー…と」

あの世のマーチングバンドを思わせる、鳴れども踊れずなドラムが印象的な「そのころ」では、《退屈だ とても退屈だ/昨日もそう 明日もそうだろう》と怠惰の連鎖から抜け出せずもがき苦しむ光景が歌われる。テープに吹き込んだかのような荒い録音の「Output」は黄昏たララバイのような曲調で《たった一つだけ/夜空で私の為にだけ輝いて/今夜、知らない間に消えないで》と淡い願望を率直に訴える。思いどおりにならない周囲と自分との葛藤や格闘にもがきながら、しゃかりきに一歩踏み出そうとする強い意志が滲み出ているのが本作の特徴で、先述の「そのころ」でもルーザーな描写を徹底的に書き連ねたあと、一番最後に飛びだす《目を醒ませ》の一言に強固な意志をかんじる。


「『そのころ』はパラレルじゃないですが、同じ時間軸に個々の生活があってそれぞれ考えて生きてるけど、私はどうやって生きようかとかどうしようもない妄想までして…いやいやしっかりしようぜっていう。」


EPのタイトルになぞらえて、「現代についてどう思いますか?」 と漠然とした質問を投げてみたら、「まだ満足するなよっていう感じですね」と力強い言葉がかえってきた。既存音源の逆回転ループによって混沌を表現した「に」と同様に、彼女の頭のなかも依然こんがらがっているなかで、這いつくばってでも表現しつづけてやろうという決意が頼もしい。<Output>は本作のテーマのひとつだが、作品制作やその告知が容易になった現代の環境下で、このEPは安易な理想論にもたれかからず、誠実にストイックに自分と向き合った末に産み落とされた歌曲集といえるだろう。ドリーミーだけど、浮世にまでは飛んで行かない生真面目さもいい。

筆者にとって彼女の最大の魅力はメロディメイカーの才で、それについては本作と対になる<Input>をテーマにした4作目のシングル『ねぇねぇ』に収録されたアンニュイな楽曲や、アルバム『Mind Party!』収録曲「花のにおい」のこぼれ落ちそうな情感にいっそう顕著だ。今後も宅録活動にまい進しつづける予定とのことだが、個人的には外部からプロデューサー的な人物を招いてもおもしろそうと勝手に思っていたりする。また、ライブ・パフォーマンスもときおり披露しており、こちらはまだまだ改善の余地が大ありだけども(ベッドルーム・ポップ系のアーティストにとってライブはいろいろと難しいですよね…)、シアトリカルな雰囲気も見せつつ独特のムードを演出している。

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・『現代化が発明する窓その頃外に』ご購入その他、詳細はこちらから。

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2011年10月1日土曜日

マックス・ツンドラがやって来る!ヤァヤァヤァ! Coming Up!!!!!!!!!!!!!!!


めっちゃ楽しいよ!!!!! 助けてくださいてくださいくださいくださいください!!! ありがとう!
奇跡の前回来日からわずか1年9カ月、ナード界の貴公子、ベン・ジェイコブスがまたやってくるよぉーーーー!



容姿を裏切る美声と華麗なる鍵盤さばき。ドタバタ動き回り、全身の脂肪を震わせる怪しくも愛くるしいアクション。ヘアスタイル&キテレツ日本語MCでオモシロ外人としてのアピールも見せつつ、ラップトップ・ミュージシャンとしては驚異的な目にも耳にもデリシャスなパフォーマンス。これは見逃せない! ナチュラルに恋せずにはいられない!

前回のツアーでは三公演くらい追っかけしたんですが(当時の拙ライプ備忘録はこちら)、今回は招聘元であるOut One Disc岸野さまに声をかけていただき、わたくし小熊もまさかのお手伝いをさせていただくことになりました。現世でもっとも敬愛しているミュージシャンのひとりだし、彼の手によるスープ缶は今でも宝物。本当に光栄です。髪…じゃなくて、足を引っ張らないようにがんばります。

10/9(日)@幡ヶ谷FORESTLIMITでは転換DJを担当します。リミックス/カバーも多く手掛け、みずからのラジオ番組ももつ才人・ベンにゆかりのある曲、お気に入りの曲、いわゆるベン・ミュージックの数々をかける予定です。

10/10(月・祝)@池尻大橋2.5Dでは公開インタヴューを担当。会場が2.5Dなのでユーストリーム中継もモチロンあり! 連休の終わりは現地やご自宅でベンを囲み、微笑みましょう。


↑みんなで間奏部分ダンスコンテストしようぜ!!


↑そしてこれがベンのD.A.N.C.E.!!!!!!!!!!!!


8日の金沢公演は前回ツアー時に豪雪に見舞われ演奏はたせず…に終わった件のリベンジ、さらに9日深夜はリキッドルームにてあの菊地成孔率いるDCPRGのフロントアクトと、他の日もドラマチック要素がもりだくさん。共演者も豪華。以下に詳細をコピペしておきます。脱毛必至の三日間、ご予約はお早めに。

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■MAX TUNDRA ASIA TOUR 2011 supported by Out One Disc

10/8(土) @金沢 KAPO

OPEN/START 15:00
料金:投げ銭制

共演:ASUNA
DJ:岸野雄一


10/9(日) @幡ヶ谷 FORESTLIMIT

OPEN/START 19:00
料金:2500円(ドリンク代別)

共演:ホッピー神山 / unbeltipo solo(今堀恒雄)
DJ:小熊俊哉(Cookie Scene) / ヴァイオレットフィズ(アート倉持/黒パイプスターダスト)


10/9(日) @恵比須 LIQUIDROOM

OPEN/START 23:59
前売 3500円 当日 4000円(共に税込/ドリンク代別)

共演:DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN
DJ:大谷能生 / CRYSTAL


10/10(月・祝) @池尻大橋 2.5D
「MAX TUNDRA ASIA TOUR 2011 TOKYO FINAL!!」

OPEN 18:30 START 19:00
料金:2500円(ドリンク代別)

共演:Riow Arai
DJ:DE DE MOUSE 他

インタビューコーナー/聞き手:小熊俊哉(Cookie Scene)

2011年9月12日月曜日

TAICOCCLUB camps’11に行ってきたよ!


新潟のニュー・グリーンピア津南で催されるようになった秋のタイコ。昨年参加したらイベント自体にすっかり惚れ込んでしまい、今年も行ってきましたよ!!!

なにがいいって、ステージが二つしかなく移動も楽チン(距離もフジロックのグリーン-ホワイト間の半分もないはず)、芝生だらけなので雨が降ってもドロんこにならない、来客数がそこまで多くないのでノビノビ踊れる(渋滞なんてどこでもありえない、ビールもすぐ飲める!)、ステージに向けて写真を撮っても注意されない…など、シンドい思いをしてまでライブを観たくない無精者にこそありがたい夢環境。今年も実に快適で、もうメンツに関係なく年に一度必ず参加したい! という思いをますます強めたかぎり。

で、ラインナップの話をすればこちらも昨年につづき非常に挑戦的。主催者である安澤太郎さんのインタヴューによると、当初はももクロを呼ぶ気まんまんだったり…というのをヌキにしても、"音楽好きによる音楽好きのためのフェス”を作ろうとしている気概がむんむん伝わってくる。世間の認知度がメガトン級なアーティストはいない(興業としての押しが弱い)が、そのぶん昨年に引き続きちょっと通好みで、新たな発見のたくさんありそうな並びだったといえるはず。

◆以下は自分の見た出演者(当日のタイムテーブルはこちら
Luminous Orange→mudy on the 昨晩(最初3曲ぐらい)→Kez YM(プラプラしながら)→Kate Wax→GOTH-TRAD(食事休憩挟みつつ)→Bibio(途中寝落ち)→モーモールルギャバン→Nathan Fake→OL Killer→Kyte(最初5曲くらい)→ATAK(最後の方だけ)→James Holden→Helios→Her Space Holiday


青空バックなジェームス・ホールデン。

今回の個人的なお目当てのひとつはトリッピーな質感が持ち味のテクノレーベル、Border Community一派。ダークでゴス/インダストリアル風味な(The Knifeにもちょっと近い?)Kate Waxはかなりツボで、序盤の出演というのもありハイになって楽しめた。最近ではレディオヘッドのリミックスで有名なNathan Fakeはかなりストイックなプレイで本人はノリノリだったが周囲はさして踊らず。作風が微妙に近いウルリッヒ・シュナウスの先日のライブも少し思い出したり。最高です。レーベル主催者James Holdenは他人様の曲も挟みつつの圧巻3時間プレイ。リアルタイムに夜明けを迎える景色をバックに、大らかに音を刻み続けるさまにウットリしてました。あと鼻がおおきかった。

もうひとつ期待大!だったBibioには正直がっくし。既存曲のリアレンジを繋げるでもなく、割とそのままに近い形でかけていた印象。たしかにボーズ・オブ・カナダに通ずる気持ちよさはあったが、アゲるでもチルるでもなく。新作におけるハードロッキンで場違いなギター(シン・リジィへのオマージュ)に顕著な冒険心をライブでもお見せよ! と嘆きつつ眠りにおちてしまった…。でも、ネットでの評判はおおむね良好だし、ライブ苦手だとしたら本人への好感度はますますあがります。

陰部打撲で有名なモーモールルギャバンはドラマーがパンツ一丁だったりキーボードの女の子が銅鑼を叩いたりイロモノ感が満載だが、ディスコパンク(どうして日本で今こんなに流行ってるの?)全開ななかでギター不在なのが好印象。パンツを脱いで客席に投げたり、やたら汗かいてたりいちいちトゥーマッチなのも新鮮で、この日いちばん盛り上がっていたのでは? パクりや引用が減ってメロディで聴かせる曲が増えれば大ファンになりそう(そういう意味でラストの「サイケな恋人」はよかった。《悲しくないけど また会いましょう さようなら》っていいフレーズだなぁ…)。

岡村ちゃん参加の覆面DJユニット、OL Killerについてはココにすばらしいまとめが。かなり今様でバキバキなエレクトロ全開で会場がagehaだったらパーティーピーポー憤死だろうが、岡村ちゃん仕事としてこれをどう受け止めるべきか皆さん困ってた印象。しかしプリンス「Kiss」がかかって岡村ちゃんがノリノリで踊る光景は門外漢な俺もウルっときたよ。月を背にして厳かな演奏を鳴り響かせるKyteは、サマソニ出演時に引き続き自分の趣味からもっとも遠い音楽。背の高いイケメンだった。


きれいな朝焼け(iPhone調子悪くて正直あんまり写真撮らなかった)

朝方のHelios→ハースペのうつくしすぎる並びは極上すぎて言葉もでません。その柔和で繊細なヘブン音楽を奏でるにもっともふさわしい、勤勉という文字を人間化したようなHeliosことKeith Kenniffさん(メガネっ子)のルックスにも萌え。打ち込みやサンプラーを駆使しながらエレガントで人懐っこいポップを淡々と奏でるマーク・ビアンキさん(タトゥーメガネっ子)は11月の来日ツアーにも期待大。ハンパなく曲がいいです(&レコーズ畠山さんがセトリもアップしているよ

2011年8月10日水曜日

White Shoes & The Couples Company - Album Vakansi(2011)



夏だ!サマー!  オシャレかまして思いを馳せて、飛行機に乗り出発ゴー! 書を捨てて家も捨て旅に出よう! 財布もスラれてメソメソ泣こう! 海に行くつもりじゃなかった。もしもあの世に行けたら……というわけで、インドネシアの洒落た6人組、ホワイト・シューズ・アンド・ザ・カップルズ・カンパニーの5年ぶりとなる新作『Album Vakansi』のライナーノーツをわたくし小熊が書かせていただきました。(リリース元の)プロダクション・デシネさま、いつもありがとうございます。 デシネの作品にハズレなし(マジで)!





レトロチックでいなたいアジアン・ルックスから織り成される洗練された音のヴァカンス、風のミラクル、宇宙のファンタジー、マジカル・ミステリー・ツアーfromインドネシア! 渋谷系の精神は遠くジャカルタで花開いたのであった…! ギタポもディスコもジャズもボッサも映画音楽も民族歌謡も、みーんなミックスされたハイセンス・チューンの連続に圧倒されてみてください。腰を揺らしながらしんみり泣くっきゃない。日本盤には、かのジミヘンの名曲「Crosstown Traffic」の驚愕カバーまでボートラとして収録だ!!!!!!

おどろきの完成度に唸らされ、ライナーを書き上げたあともすっかり愛聴盤のひとつになってしまいましたが、いろいろ調べて驚かされたのが本作から広がるジャカルタ・シーンの魅力。すぐれた作品は歴史を紐解くにもすばらしい指針となるわけで、かの地の熱狂は自分自身もまだうっすらとしか認識できてませんが、紹介しがいがありそうなので、暇を見つけてそういったちょくちょく記事も書いていくつもりですー。



↑アルバムのトレイラー



↑楽しそうなアートワーク作成の図。BGMで流れているのは「Hacienda」。ホット!



↑個人的にアルバム一のお気に入り、「Selangkah Ke Seberang」。
ちょっと音質悪いライブ動画ですが、超ファンキー!



↑リハーサル・セッション兼MV。「Vakansi」はしっぽり聴かせる心地よい一曲。
オジサマっぽい人は巨匠ジャズ・ギタリスト。
ベテランへのリスペクトっぷりも本作の魅力のひとつ。
コチラでは同曲のライブの模様も。どうです、この艶やかさ!